大学受験の合否を決める要素として赤本が挙げられます。いつから使うべきか、どのように活用すべきか、青本・黒本を使ったほうがよいのか、自信を持てない受験生も多いのではないでしょうか。今回は、赤本の概要をはじめ、始めるタイミングや青本・黒本との違い、効果的な使い方、勉強法などについて解説します。
目次
赤本とは?
赤本とは、各大学で実施された入試の過去問題集です。各大学が出版しているわけではなく教学社(きょうがくしゃ)が出版しています。
赤本の歴史は50年以上となっており、大学受験における過去問の代名詞として受験生のマストアイテムとなっています。
赤本の解答は、全国の高校や予備校などで受験指導をしている先生、大学の先生などが作成しています。
赤本はいつからやる?
赤本はいつから始めればよいのか迷う方も多いでしょう。早く始めるメリット・デメリット、遅く始めるメリット・デメリットを整理すると、いつから始めるべきか自分なりに判断しやすくなります。
高校2年生から始める場合のメリット・デメリット、高校3年生から始める場合のメリット・デメリットは下記の通りです。
始める学年 | メリット | デメリット |
高校2年生 | 早いうちから問題の傾向や難易度を把握することで、重点的に取り組むべきテーマがわかる | 基礎固めができていない段階で取り組むと難易度が高く見えて、受験を諦めてしまうリスクがある |
高校3年生 | 基礎固めが完了している状態で取り組むことで、解ける問題が多くなり受験意欲が高まる | 取り組むのが遅れると、過去問を解き終わらず全体の傾向をつかみ損ねて、対策が中途半端になる |
それぞれのメリット・デメリットをふまえると、基礎固めが終わるタイミングや志望校が具体的に絞り込めた段階から取り組むのが理想的です。具体的には高校3年生の夏休み後あたりを目安にするとよいでしょう。
大学受験における赤本のスタート時期【志望校の種類別】
赤本のスタート時期は志望する大学の種類によっても変わってきます。続いては難関国公立大・旧帝大を志望する場合、難関私立大を志望する場合、中堅私立・地方国立大を志望する場合のスタート時期を解説します。
難関国公立大・旧帝大を志望する場合
二次試験では論述力や記述力が求められることが多いです。ただ、論述力や記述力はすぐに養える能力ではありません。
早いうちから赤本の出題形式に慣れて、文章を書く練習を始める必要があります。
目安としては高校2年生の終盤あたりに一度触れておいたほうが良いでしょう。傾向や自身の実力を把握してみてください。
難関私立大を志望する場合
早慶やGMARCH・関関同立などの難関私立大は応用問題が出題されやすいため、ほかの受験生と差をつけるためにも難問に慣れる必要があります。
遅くても高校3年生の夏休み中には赤本に挑戦しておきたいところです。特に早慶は高度な問題が出題されるため、早めに取り組むことをおすすめします。
早慶やGMARCH・関関同立の偏差値について気になった方は下記の記事をご覧ください。
早慶上理とは!各大学の偏差値や特徴、就職先、著名な卒業生について紹介!
MARCH(マーチ)とは!各大学の偏差値や特徴、就職先、著名な卒業生について紹介!
関関同立とは!各大学の偏差値や特徴、就職先、著名な卒業生について紹介!
中堅私立・地方国立大を志望する場合
中堅私立・地方国立大を志望する場合は、共通テスト対策が必要であれば早めに赤本に触れておく必要があります。
そうでなければ、赤本を解いたときに高得点を獲得して自信を持てるよう、焦らずに基礎を固めてから取り組むのもよいでしょう。
ただし、取り組むのが遅すぎると、弱点を見つけても克服する余裕がなくなってしまいます。遅くても高校3年生の秋くらいには解き始めるようにしましょう。
赤本・青本・黒本の違いは?どっちを使う??
赤本以外に青本、黒本の存在が気になっている方もいるでしょう。どっちを使うべきか迷わないように、違いを知っておく必要もあります。それぞれの違いを表にまとめると下記の通りです。
比較項目 | 赤本 | 青本 | 黒本 |
出版元 | 教学社 | 駿台塾 | 河合塾 |
特徴 | ・収録年数が多い
・解説はシンプル |
・難関大学の過去問のみ
・赤本より解説が充実 |
・大学入学共通テスト(センター試験)のみ掲載
・解説が細かい |
使い分け | ・大学の種類、教科を問わず活用 | ・難関大学の対策をしたい場合に活用
・赤本利用後の弱点克服、理解補強に活用 |
・大学入学共通テストの対策をしたい場合に活用 |
基本的には赤本を活用し、難関大学を受験する場合は青本、大学入学共通テストの対策をしたい場合は黒本も活用する流れです。
なお、赤本には難関校過去問シリーズもあります。たとえば「東大の英語25カ年」「早稲田の国語」のように特定の大学・教科に絞った過去問集が出版されています。苦手科目を徹底的に分析して得点源にしたい受験生におすすめです。
赤本の具体的な使い方や活用方法
赤本を始めるタイミングが正しくても、使い方や活用方法を間違えてしまうと志望校に合格しづらいです。ここでは赤本の具体的な使い方や活用方法についても解説します。
本番形式で時間を計って解く
赤本を解くときは本番形式で時間を計って解きましょう。練習でゆっくり問題を解いて正答できたとしても、本番で時間内に正答できなければ不合格になります。
試験当日は見直しの時間も確保できるように、赤本で演習するときも時間が余るくらいのスピードで正答できるように意識しましょう。
採点と合格最低点を比較する
採点結果が合格最低点を上回っているかを確認します。なお、採点した得点と合格最低点を比較するときには、必ず知っておくべきことがあります。合格最低点は、得点調整(選択科目による不平等を解消するための調整)が行われたあとの得点です。
合格最低点をクリアしたとしても、合格レベルに達しているわけではない恐れがあります。念のため、合格最低点を大幅に上回ることができる学力に到達しておきましょう。
復習と分析を徹底する
赤本をたくさん解くと対策したような気分になって安心してしまいがちです。ただ、インプット量が多くなるほど、知識や解法、計算プロセスなどが頭に定着しにくいこともあります。
復習の時間をたっぷり確保して、間違えやすい問題を分析によって抽出することが重要です。誤った問題がすぐにわかるように、付箋を貼って素早く復習できるようにするのもおすすめです。
赤本で特に試したい勉強法
赤本の使い方や活用方法をご紹介しました。赤本での学習効果を高める勉強方法、勉強の仕方は実にさまざまです。ここでは赤本で特に試したい勉強法を解説します。
参考書・問題集を並行して学習する
代表的なのが参考書・問題集と並行で赤本を学習する勉強の仕方です。赤本を解いて出題傾向をつかんだあと、参考書で出題範囲を重点的に学んで、問題集で該当する範囲の問題を演習します。
問題集で知識や解法を頭に定着させたあとは、再び赤本を解いて今まで解けなかった問題が解けるようになっているか確かめます。
過去問の間違った部分をまとめる
過去問の間違った部分を放置すると、知識や解法が頭に定着せずに、ただ時間が無駄になることもあります。間違った部分の問題と解法、解き方のコツなどをノートにまとめて、いつでも復習できるようにすると効果的です。
イラストや図、表を作って解説を補足したり、語呂あわせをつくったりすることで、次は間違えないように対策できます。
年度ごとの出題傾向を比較する
年度ごとに出題傾向を比較して自分なりの分析結果をアウトプットします。特に重要なのが頻出テーマの分析です。頻出テーマが見えてきたら、赤本やそのほかの問題集で該当するテーマを徹底的に演習します。
反対にほとんど出題されていないテーマについては、学んでも得点につながらない可能性もあります。最低限理解する程度にとどめて、学習時間を割きすぎないように注意しましょう。
赤本を使うときの注意点
赤本を使うときにはいくつか気をつけなければならないこともあります。赤本を使うときの注意点を解説します。
解説がひどい・雑だといわれる場合もある
赤本は人によっては「解説がひどい」「解説が雑」と感じることもあるようです。
赤本の解説を読んでわからないとき、あるいは解説不足を感じるときなどは、自分で調べたことを書き込んで、解説を充実させるといった使い方を検討する必要もあります。
基礎力が不十分な場合は参考書を併用する
基礎力が不十分な場合は、赤本の解説がわかりやすくても理解できずに、知識や解法がうまく頭に定着しないこともあります。
解説がわからないときは、基礎に立ち戻って苦手を克服できるように、参考書を併用することも重要です。イラストが豊富な参考書、会話調でスムーズに内容が頭に入ってくる参考書など、苦手分野をスムーズに理解できる本を探してみましょう。
赤本に関するよくある質問
赤本の使い方がおおよそ理解できたのではないでしょうか。使い方をさらに深く理解できるように、赤本に関するよくある質問にQ&A形式で回答します。
Q1.赤本は何年分解くべき?
A1.赤本は一般的に直近の5年分を解くことで出題傾向をある程度把握できます。
難易度や出題形式の変化が大きい大学の場合は、10年分くらい解いて長期的な出題傾向まで分析しておくと、対策の精度を高められるでしょう。
滑り止めや第一志望の大学など確実に合格したい大学については、自信を持って当日の受験に臨めるように、少なくとも5年分以上を解いておくことをおすすめします。
Q2.赤本は最新の年度と古い年度のどちらから解く?
A2.基本的には最新の年度から解くのが合理的です。
求められる学力は時代によって変化し、古い年度の過去問は現代に必要な学力を測定できる問題ではなくなっているかもしれません。
したがって、古い年度の問題から解いてしまうと、入試対策に失敗するリスクも高まります。あくまで最新の年度から解いたうえで、余力があれば古い年度の問題を分析に役立てましょう。
Q3.赤本を解くのに必要な基礎は?
A3.赤本を解く土台となる基礎は、高校の教科書レベルの知識です。
英語なら単語や文法、数学なら定理や公式などが、赤本を解くのに必要な基礎となります。
基礎力を赤本の問題で発揮することで、単語や文法の知識が定着しやすくなり、定理や公式の使い方についても理解が深まります。
早いうちに基礎を固めて赤本に挑戦すれば、着実に学力をアップしながら合格の可能性も高められるでしょう。
Q4.医学部志望の場合は赤本をいつから始める?
A4.高校2年生の終盤から高校3年生にかけて早期に取り組むのが望ましいです。
医学部受験では、高校の履修範囲を超えた発展的な内容が出題されやすいだけでなく、特別な解答テクニックが求められることもあります。
早いうちに赤本に取り組んで難易度の高さを実感して、対策の必要性に気づくことが重要です。
そのためにも高校で学ぶべきことは、すべて高校2年生で終わらせるつもりで学習を進めておきましょう。
Q5.志望校以外の赤本も解く?
A5.出題形式やレベルが近い大学の問題を解けば、志望校の受験に向けたトレーニングになる可能性もあります。
ただし、志望校の赤本をマスターし損ねてしまえば、受験に失敗するリスクが高まります。
あくまで志望校の赤本で高得点が取れることを前提として、無理のない範囲で取り組むようにしてください。
まとめ
赤本を適切なタイミングにうまく使いこなすことで、志望校への合格可能性を高められます。ただ、赤本を我流で使って対策をした結果、不合格になってしまうお子様も珍しくありません。
受験で失敗したくない方は、赤本の正しい使い方を教育の専門家にレクチャーしてもらうことも重要です。赤本の使い方に自信がない方、赤本を用いて志望校対策をしてほしい方などは、Axisのオンライン家庭教師のホームページをご覧ください。
進路に迷っている方は、以下の記事も参考にしてみてください。