近年、大学入試で小論文の重要性が急激に上がっています。そこで、学部系統別にどのようなテーマの小論文が出題されたのかまとめました。今後の大学受験勉強にぜひご活用ください。
2021-2024年度大学入試の医療・保健系学部の小論文
医療・保健系学部は、人間の健康を保つための学問です。けがや病気などで健康を損なった人の健康回復も含みます。人間を対象にしているので、獣医学部は含めません。
この学部に含まれる学科は、医学部、歯学部、薬学部、看護学部、保健学部、リハビリテーション学部などです。
医療・保健系学部の小論文の傾向
2021年度の最も顕著な傾向は、やはり新型コロナウイルス感染症に関するテーマが多いことでしたが、年々減少傾向にあります。ただし、2023年度は新型コロナウイルス感染症関連の問題が出題されている大学もありましたので、本年度もコロナ関連のニュースなどを見ておくと良いでしょう。オンライン化による医療行為への影響もテーマに挙がっています。また、近年の医療・保健系学部では患者とのコミュニケーション能力を意識した出題が多くなっています。2024年も引き続き、コミュニケーションに関する問題や、考えの異なる人への意識の持ち方についての問題が出されています。AIについての問題も多く見受けられ、AIが医療をどう変えていくか、など考える問題も出題されることが予想されます。
また、ヤングケアラーなど最近話題になっている内容も多く見られた一方で、100年前や400年前の医療界での画期的な功績を紹介する問題も出されていました。どちらも、医療人の育成を意識していると思われます。
2021-2024年度入試で出題された小論文のテーマは以下のとおりです。
- 新型コロナウイルス感染症などの感染症対策と医療従事者の医療姿勢(弘前大学・医学部・保健学科・放射線技術科学専攻)
- 理学療法士のテレワーク導入の必要性と是非、リハビリスタッフの技量(弘前大学・医学部・保健学科・理学療法専攻)
- 出生前診断(弘前大学・医学部・保健学科)
- 外国人看護師の受け入れ(弘前大学・医学部・保健学科・看護学専攻)
- 辛い食べ物の人体への影響、胎児の発達(秋田大学・医学部・医学科)
- 将来的なAIの医療への関わりを予想、人間がどのように対応すべきか(秋田大学・医学部・医学科)
- 孤独・孤立の問題点と解決策(秋田大学・医学部・保健学科)
- 濃厚接触、海軍の戦場での死亡原因, 新型コロナウイルスと看護状況(福井大学・医学部・看護学科)
- カルティベーションの考えのもと多様な価値観を持つ人々が活躍できる社会の実現に向けて(福井大学・医学部・看護学科)
- 旧優生保護法による強制不妊、データを活用しての状況把握(福井大学・医学部・医学科)
- 患者の方言に対する医療者の配慮、不妊治療と仕事の両立、年代別平均歩数、死とQOL(富山大学・医学部・看護学科)
- AIの活用と医師の業務、出生時の生存率と人種問題(富山大学・医学部・医学科)
- 「確証バイアス」とは何か(富山大学・医学部・看護学科)
- 薬の活用、IT機器の活用と人間の関り、ワクチン接種(群馬大学・医学部・医学科)
- ウイルス、PCR法(群馬大学・医学部・保健学科)
- 医学の基礎研究(東京大学・理科三類)
- 母親のワンオペ子育て(東京医科歯科大学・医学部・保健衛生学科・看護学専攻)
- 学力格差(東京医科歯科大学・医学部・保健衛生学科・看護学専攻)
- 認知的行動療法(東京医科歯科大学・医学部・医学科)
- ミーム(東京医科歯科大学・医学部・歯学科)
- 争いと和、「空気」の支配(上智大学・総合人間科学部・看護学科)
- 闘病生活の苦しみ、友人関係における善意(東京医科大学・医学部・医学科)
- ヤングケアラー(岐阜大学・医学部・看護学科)
- 検査結果の表の見方(藤田医科大学・医療科学部・医療検査学科)
- 母親の年齢別出生率の違いと社会の関係(藤田医科大学・保健衛生学部・看護学科)
- 理学療法士と作業療法士の人数の国際比較(藤田医科大学・保健衛生学部・リハビリテーション学科)
- 短い言葉に込められた意図の推察、自分と考えが異なる人への対応(浜松医科大学・医学部・医学科)
- 介護する側・される側の気持ち(浜松医科大学・医学部・看護学科)
- 新型コロナウイルスが子どもに与えた医学的リスク以外の影響、医師としての環境問題との関り(三重大学・医学部・医学科)
- 独創的な研究とは、臨床的知見(大阪大学・薬学部)
- 聴く力(鳥取大学・医学部・保健学科)
- 医療人を目指す者として、あなたは大学で何を学びたいと考えるか(鳥取大学・医学部・保健学科)
- 人間関係における透明な存在(鳥取大学・医学部・保健学科)
- 人口減少を踏まえた地域活性化(島根大学・医学部・看護学科)
- 飛沫防止実験の結果の見方、健康に関する職業間の違い(広島大学・医学部・医学科)
- 高齢者の外出自粛によるデメリット(広島大学・医学部・保健学科)
- 新型コロナウイルス禍における日常の変化に関する考察(広島大学・医学部・歯学科)
- オンライン化の進展による変化の予想、アンパン好きの高齢者とアンパンをやめさせたい訪問看護師(広島大学・医学部・口腔健康科学科)
- シンギュラリティ到来時に起こる医療現場での改善と新たな課題(山口大学・医学部・医学科)
- 時代の循環認識と、インターネット利用の精神への影響(山口大学・医学部・保健学科)
- ガン患者の生存状況(徳島大学・医学部・保健学科)
- 老化の捉え方(徳島大学・歯学部・歯学科)
- 現代の子育て・ほめ方(香川大学・医学部・看護学科)
- COVID-19に関する論文から出題(香川大学・医学部・医学科)
- 家族の看取り、心の豊かさ(大分大学・医学部・看護学科)
- 医学的研究方法(琉球大学・医学部・医学科)
- 科学技術と医療の未来(九州大学・医学部・保健学科)
- 物理的接触への生物的反応の研究と接触を伴わない社会行動、医療現場での実践能力についての認識(九州大学・歯学部)
- 約400年前の産業医学の先駆者が残した職業病による判例の振り返り、女性の健康とヘルスリテラシー(産業医科大学・医学部)
医療・保健系学部の小論文の対策
医療・保健系学部では、医療現場で患者と円滑にコミュニケーションを取れる能力がありそうかどうかを見ています。コミュニケーション能力というのは、自分と異なる状況にある人がどういう気持ちでいるのかを想像して適切にやり取りをする能力を指します。
受験生の多くは健康上の大きなトラブルを抱えた経験がないでしょう。経験がなければ、想像するのはなかなか難しいです。また、仮に正しく想像できても、「この対応をすれば大丈夫」という正解があるわけではありません。まずは関心を持ち、もしその状況に自分がいればどう感じるかを想像してみましょう。医療・保健系学部は、人への温かな関心が問われる学部とも言えます。
また、経験者に話を聞ければ、気持ちを想像する助けになるかもしれません。国公立病院の中には、高校生を対象に、現役の医師が現場の様子などを伝える場を設けるイベントを定期的に開いています。そうしたイベントに積極的に参加してみましょう。生(なま)の声はやはり気持ちが伝わってきます。
加えて、医療ニュースにはアンテナを張りましょう。医療知識を勉強する必要はありませんが、岐阜大学の「ヤングケアラー」や弘前大学の「外国人看護師の受け入れ」のように、「今、話題になっていること」は自分ごととして考えたり調べたりする習慣をつけたほうがいです。普段気に留めていないことを聞かれても、表面的な考えしか書けません。
AIのニュースについても、AI関係の出題の可能性があるので、秋田大学の「将来的なAIの医療への関わりを予想、どう対応していくか」のような問題についても日頃から考えておくと、受験本番で役に立つかもしれません。
習慣をつけるためには、ネットニュースだけでなく新聞や書籍などの紙媒体も目を通しておくほうがいいです。リコメンド機能の発達で、普段からよく見ている分野のニュースには詳しくなれます。逆に、普段からよく見ているニュース以外に触れる機会が少なくなるため、世情に疎くなりやすいです。ネットも紙媒体もどちらも活用するようにしましょう。
大学ごとのアドミッションポリシーを確認しておくことも、非常に重要です。志望大学がどのような学生を求めているのかを理解した上で、自分の意見を書きましょう。
各大学のアドミッションポリシーについては以下を参考にしてみてください。
小論文の書き方についてはこちらでも紹介しています。
手早く合格を取れる小論文の書き方とは?塾関係者が例文付きで解説!
まとめ
いかがでしょうか。医療・保健系学部の小論文は医療テーマが多く出題されます。問われているのは医療知識ではなく、医療への関心や受験生自身の人となりです。つまり、ケガや病気という健康上のトラブルを抱えている患者の気持ちを真に想像し、寄り添える姿勢を持っているかどうかを問われています。
と言っても、受験生の大半は18歳から20歳過ぎです。患者の気持ちを真に想像するのは大変です。そもそも、同じ状況でも人によって感じ方が異なります。その状況でどのような問題点や観点があるのかを入試前に知っておくだけで、かなり解答しやすくなります。他人と質疑応答を重ねれば、今まで知らなった新たな見方を獲得できるようになります。
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