【2024年版】【大学別】一橋大学の過去の小論文傾向

大学入試改革により、2021年度入試より小論文を入試科目として採用する大学が急増しました。実際にどういうテーマが出題されていたのかを紹介します。今後の受験勉強にぜひご活用ください。

2021-2024年度の一橋大学の小論文テーマ

2021年度から2024年度の一橋大学の小論文テーマ一覧は以下のとおりです。

年度 学部・学科

(試験種別)

小論文の種類 テーマ
2024 商学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、小野塚知二著『経済史―いまを知り、未来を生きるために』(2018年、有斐閣)からの抜粋である(ただし、問題作成上、節のタイトル形式を変更し、注を削除し、出題にあたって一部文章を修正している)。この文章を読んで、次の3つの設問に答えなさい。

設問1. 下線部①「分業の効率性が自由と不自由の両方の根拠となりうる」という点について、なぜ筆者はそのように考えているか、300字以内で説明しなさい。

設問2. 下線部②「労働を単純に分割するだけでは効率性は達成できません」という点について、筆者が効率性を達成するうえで必要だと考えていることを、300字以内で説明しなさい。

設問3. 傍線部③「効率性による自由が実現し、同時に、その不自由も発現する」状況について、あなたの身の回りの事柄や知っている事例を一つあげて、500字以内で説明しなさい。

経済学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の①の文章、及び②の資料を参照して、以下の設問に答えなさい。

①の出典:岩井克人(2006)『二十一世紀の資本主義論』(ちくま学芸文庫)抜粋(出題のために一部改変した箇所がある)

②の出典:大量のドイツマルク紙幣で無造作に遊ぶ子ども 出所:星野眞三雄(2022)「ドイツに禍根残したハイパーインフレの恐怖」 The Asahi Shimbun GLOBE+, 2022年12月22日;https://globe.asahi.com/article/14797344)

問1. 貨幣とは何か。①の文章に即して400字以内で答えなさい。

問2. 現在、世界の基軸通貨はアメリカ・ドルである。アメリカ・ドルが現在の基軸通貨であるとはどのような状態か、答えなさい。また、アメリカ・ドルの基軸通貨体制の今後の方向性や展望について、①の文章も踏まえ、あなたの考えを述べなさい。合わせて400字以内で回答すること。

問3. ②の写真は、ドイツ連邦銀行(中央銀行)の貨幣博物館に展示されている大量のドイツマルク紙幣で無造作に遊ぶ子どもを示している。この写真は1920年代頃の様子を示しているが、近年でも、例えば1999年から2009年にかけて、ジンバブエでは同様の光景が見られた。このような「ハイパーインフレーション」とはどのような状態か答えなさい。また、今後、日本でこのような「ハイパーインフレーション」が起こりうるかどうか、①の文章も踏まえて、400字以内であなたの考えを述べなさい。

問4. 2021年にエルサルバドルが、2022年に中央アフリカ共和国が、仮想通過(cryptocurrency)であるビットコインを法定の通貨とした。しかし、中央アフリカ共和国はその後に仮想通貨を法定通貨とすることを撤回し、エルサルバドルでもビットコイン建ての国内向け送金が全体に占める割合は小規模に止まっており、大半の国民がビットコインの法定通貨化を失敗とみている。なぜ、両国の試みはうまくいかなかったのだろうか。①の文章も踏まえて、あなたの考えを400字以内で述べなさい。

法学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、小塚荘一郎『AIの時代と法』(岩波新書,2019年)からの抜粋である(なお問題作成の都合上、表記などに適宜変更を加えた)。この文章を読んで、以下の設問に答えなさい。

設問1. 下線部1について、「法が持っている本来的な性質」とはいかなるものかについて、課題文の趣旨に照らして、400字以内で述べなさい。

設問2. 下線部2について、「テクノロジーが経済活動とその担い手である企業を大きく変革していく時代」において、「企業と国家のパワー・バランス」は、具体的にどのような「新たな展開」が想定されるのか。課題文が示す問題意識を踏まえた上で、あなた自身の考えを800字以内で述べなさい。

社会学部

(学校推薦型選抜)

テーマ型 設問. インターネット検索により、知りたいことの多くを簡単に調べられるようになったことのメリットとデメリットについて述べたうえで、私たちが今後どのような点に留意し、これをどう活用していけばよいか、考えを述べなさい。(1200字以内)
ソーシャル・データサイエンス学部

(学校推薦型選抜)

課題文(問題)読み取り型 設問.ある年に、日本で売られているパンの値段が上がり、パンの販売量が低下した。その年、または前の年には、パンの価格、販売量に関係するような以下のような出来事があった。

1.     その前の年もパンの値段は上昇していた。

2.     主食の米の人気がさらに低下した。

3.     スーパー、コンビニで売られているパンの多くに添加されている人工甘味料に発がん性物質が検出されたことが多くのメディアで報道された。

4.     パンの原料である小麦の値段が上昇した。

5.     ヨーロッパのパンの大手企業が、日本に工場と店舗を展開し、本格的に参入してきた。

分析を簡単にするために、日本のパンは1つの市場で取引されているものとする。

設問(1)以上の5つの出来事の中で、それなしにはその年の日本のパンの価格、販売量の変化を説明できない出来事を選びなさい(1つだけであるとは限らない)。

設問(2)なぜそれらの出来事の結果パンの価格が上がり、販売量が低下するのかを図等を用いて説明しなさい。

2023 商学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、「問い直されるESG資産運用」(日経ビジネス2022年6月27日号)からの抜粋である(ただし、問題作成上、写真や文章の一部を削除し、傍線と語注を追加している)。この文章を読んで、次の2つの設問に答えなさい。

問(1)傍線部①「ラウド氏は、変化が特にはっきり見えた重要分野として、防衛、エネルギー、ソブリンリスクの3つを挙げる。」について、各分野における変化の内容を、あわせて600字以内で説明しなさい。

問(2) 傍線部②「問題を難しくしているのは、普遍的、客観的で厳密なESG投資の枠組みが存在しないことだ。」とあるが、課題文全体に書かれているESG投資をめぐる諸問題を簡潔に整理したうえで、ESG投資の是非に関するあなたの立場を明確にし、その理由を600字以内で説明しなさい。

経済学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 設問(1) 社説内に、 「パートら短時間労働者が加入できる企業案件も2年後までに「従業員501人以上」から「51人以上」に緩和することを既に決めている。」とあるが、具体的には、週労働時間20時間以上働く短時間被保険者の適用拡大は、2016年10月から500人超えの企業、2022年10月から100人超えの企業、2024年10月から50人超えの企業というスケジュールで段階的に行われることになっている。社説の趣旨を踏まえて、企業規模に応じて段階的に実施する理由を考え、合計200字以内で述べなさい。

設問(2) 設問(1)において、週労働時間20時間以上働く短時間被保険者の適用拡大が起こっていることにふれたが、その結果、企業が行う可能性のある保険料支払い逃れの方法を合計200字以内で述べなさい。

設問(3) あなたが設問(2)で答えたような保険料支払い逃れの行動を多くの企業がとった場合、非正規・正規労働者の賃金格差の問題にどのような変化が生じるかを理由もあわせて合計400字以内で論じなさい。ただし、仕事内容、訓練に関する人的投資の側面を考慮した上で答えなさい。

設問(4) 企業が様々な理由から保険料支払い逃れを行うことが困難な場合、「勤労者皆保険」の導入によって、企業側の非正規雇用の仕方にどのような変化が現れると予測されますか。合計200字以内であなたの考えを述べなさい。

設問(5) 上記の社説や設問の解答をもとに、あなたの「勤労者皆保険」に対する意見を合計400字以内で述べなさい。

出典:河北新報社説デジタル版(2022年5月31日)「勤労者皆保険」提唱 負担の形、示すことが先決だ

社会学部

(学校推薦型選抜)

テーマ型 設問. 自由と不自由のあいだの不可分な関係について多面的にとらえ、論じなさい。(1200字以内)
ソーシャル・データサイエンス学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の文章は、渋沢 栄一『論語と算盤』(2013年、株式会社KADOKAWA)の「人は平等なるべし」からの抜粋である。経済の生産性を高めていくためには、古くは、アダム・スミスが示したように、分業によって実現ができると考えられてきた。さらに、「適材を適所」に置くことで、分業の効果はさらに高まる。

設問(1) 今後は、AIと人間の分業が進展していくものと考える。AIと人間はどのように分業をしていくべきと考えるか。AIが得意とするところと人間が得意とするところを踏まえて800字以内で説明しなさい。

設問(2) AIは人間を超えた力を持つことも予想されている。その時に、データやAIを持つ者人間と持たざる人間、人とAIを競わせようとするような社会の動きから、不平等は拡大すると考えるか。800字以内で自分の意見を書きなさい。

2022 商学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、ジェリー・Z・ミュラー著・松本裕訳『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(2019年、みすず書房)からの抜粋です(ただし、問題作成上、文章を一部変更し、強調記号や注を削除しています)。この文章を読んで、次の4つの設問に答えなさい。

問1. 傍線部①「上司からすれば、部下には小物の麻薬密売人を大勢逮捕することで数字を積み上げてもらいたいのだ」について、筆者はなぜそのように考えているか、250字以内で説明しなさい。

問2. 傍線部②「上澄みすくい(クリーミング)という古典的な戦略が取られる。」について、その戦略の概要およびその戦略が取られた理由を、あわせて150字以内で説明しなさい。

問3. 傍線部③「問題は測定ではなく、過剰な測定や不適切な測定だ。測定基準ではなく、測定基準への執着なのだ。」について、「測定基準への執着」の内容を明らかにした上で、それがなぜ起きると筆者が考えているか、400字以内で説明しなさい。

問4. 傍線部④「医療業界で生じている問題がほかの多くの業界でも見られるということだ。」について、ほかの業界でも見られる「問題」をあなたの身の回りの事柄やニュースなどから一つ取り上げて、400字以内で説明しなさい。

経済学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下のⅠとⅡの文章を読み、各問いに答えなさい。

Ⅰの出典:堂目卓生『アダム・スミス』中公新書、2008年、pp159-7。

Ⅱの出典:ダロン・アセモグル他『マクロ経済学』東洋経済新報社、2019年、p244

問1. Ⅰの立場に立って、「分業」(division of labor)によって豊かさが増進する理由を、「特化」に関する下記の3つの視点から説明しなさい。(800字以内)

①労働の特化による時間の節約

②労働の反復による学習効果

③労働の特化による発明の促進

問2. Ⅰの下線部(a)のとおり、アダム・スミスは生産性向上が社会の最下層の人びとの生活水準を向上させると述べる。しかし、一方で、Ⅱの下線部(b)で指摘されているとおり、近年、経済成長が不平等の拡大につながるとする見方も増えている。例えば、経済成長をもたらす資本蓄積が所得の不平等を生む背景として、トーマス・ピケティとマニュエル・サエズは、富裕層の所得の構成要素が変化していることを指摘している。すなわち、1970年代以前は、富裕層の所得のほとんどは資本所得(株式配当、資産譲渡益、利子所得、不動産収入など)であったが、最近の30年間に、富裕層の所得のうち賃金の割合が劇的に増加したという。このような所得構成の変化を生み出した制度的背景を説明しなさい。また、分業の利益が最下層にまで広がらなくなった理由として、社会の分業構造にどのような変化が生じたのだろうか。考えられる理由を説明しなさい。(800字以内)

参考文献:Emanuel Saez and Thomas Picketty, “Income inequality in the United States, 1913-1998,” Quarterly Journal of Economics, Vol. 118, 2003, pp. 1-39.

法学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、マイケル・サンデル(鬼澤忍訳)『実力も運のうち――能力主義は正義か?――』(早川書房、2021年)からの抜粋です(ただし、問題作成の都合上、表記の仕方などは適宜変更を加えている)。

問1. 下線部1の趣旨について、400字以内でわかりやすく説明しなさい。

問2. 下線部2について、著者(マイケル・サンデル)は、なぜこのように述べているのか、また、下線部2の「福祉国家リベラリズムの哲学の弱点」を補うために、あなた自身はどのような議論を展開するかを、800字以内で述べなさい。

社会学部

(学校推薦型選抜)

テーマ型 問題. 社会生活における「曖昧さ」の弊害と効用について、具体例を挙げながら論じなさい。(1200字以内)
2021 商学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、ジョン・マクミラン著・瀧澤弘和/木村友二訳『市場を創る:バザールからネット取引まで』(2007年、NTT出版)からの抜粋です(ただし、問題作成上、節のタイトル形式を変更し、注を削除しています)。

問1. 傍線部①「市場とともに文化が発展した。」という点について、筆者はなぜそのように考えているか、250字以内で説明しなさい。

問2. 傍線部②「競争は個々の市場参加者の力を抑制し、ほとんどの市場において、個人が全体の結果を左右しないようにしている。」という点について、筆者はなぜそのように考えているか、250字以内で説明しなさい。

問3. 傍線部③「それが市場経済と呼ばれるのは、これらの非市場的な取引でさえ市場の文脈の中で行われているためである。」について、「これらの非市場的な取引」の内容を明らかにした上で、筆者はどのように考えているか、400字以内で説明しなさい。

問4. 傍線部④「市場経済は唯一の自然な経済であり理にかなった唯一のものであり、唯一繁栄をもたらすものである。」という意見に対して、あなたはどのように考えるか。あなたの立場を400字以内で説明しなさい。

経済学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問1. 「上位1パーセントの所得シェアがほとんど拡大していないからといって、日本の格差問題が深刻化していないとはいえない」という立場に立って、近年の日本ではどのような格差問題が深刻化しているかを、例を挙げながら説明しなさい。またその解決策を提示しなさい。(800字以内)

問2. 「日本で上位1パーセントの所得シェアが停滞しているのは決して望ましいことではなく、むしろ日本の経済・社会に存在する問題点の現れである」という立場に立ち、それがどのような問題点かを、例を挙げながら説明しなさい。またその解決策を提示しなさい。(800字以内)

参考文献:森口千晶「日本は「格差社会」になったのか:比較経済史にみる日本の所得格差」『経済研究』Vol. 68, No. 2,,pp169-189(2017)

法学部

(学校推薦型選抜)

課題文読み取り型 問題. 以下の課題文は、小坂井敏晶『責任という虚構』(東大出版会、2008年)からの抜粋です(ただし、問題作成の都合上、表記の仕方などは適宜変更を加えています)。これらの文章を読んで、次の2つの設問に答えなさい。

問1. 下線部1について、ハンナ・アーレントが「悪の陳腐さ」という言葉で表現したかったのは、どのような内容であると考えられるか。400字以内で説明しなさい。

問2. 下線部2について、筆者(小坂井敏晶)の立場からすると、このような結果が出た理由をどう説明することになるか。また、その立場からの説明について、あなた自身はどう考えるか。800字以内で述べなさい。

社会学部

(学校推薦型選抜)

テーマ型 問題. 「人間はミスをおかす」という事実に、適切に対処する方法や態度について、具体例を挙げながら論じなさい。(1200字以内と思われる)。

2021-2024年度の一橋大学の小論文傾向

商学部・経済学部・法学部は課題読み取り型、社会学部はテーマ型の傾向が続いています。2023年度よりソーシャル・データサイエンス学部が新設されましたが、こちら課題文読み取り型でも他学部と同じパターンと、問題文を読んでの図解が必要なパターンがあり、年度によって傾向が変わっています。

課題文のテーマはやや具体的なので、初見のテーマでも読みやすいと言えます。

設問数は社会学部のみ1問で、それ以外の学部は2~4問ありました。字数は、どの学部も合計1000字を超えていました(2024年度ソーシャル・データサイエンス学部は除く)。

設問内容はソーシャル・データサイエンス学部以外、4年間変わっておらず、本文内容の要約と受験生自身の意見を書く問題です。

課題文の読解も設問も、標準レベルです。そのため、論理的に書く力をハイレベルで求められています

早い段階から1000字前後の記述練習をはじめておき、論理的でわかりやすい書き方・内容になっているかどうかを添削してもらうようにしましょう。

小論文の書き方についてはこちらでも紹介しています。
小論文の書き方 手早く合格を取れる小論文の書き方とは?塾関係者が例文付きで解説!

まとめ

いかがでしょうか。一橋大学の小論文入試は一見するとむずかしそうに見えません。が、書く力を相当求められますので、早めに小論文対策をはじめておきましょう。

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