DXハイスクールとは?採択校・指定校の取り組み事例、メリット、課題を解説!

近年、あらゆる業界でDX推進の波が押し寄せており、教育業界も例外ではありません。DXハイスクールというデジタル人材育成強化の取り組みが始まっており、高校教育の環境が大きく変わる兆しが見えてきました。DXハイスクールについて理解を深めることで、ITスキルを磨くための進路を検討しやすくなるほか、これから大学受験で求められるデジタル人材も想像しやすくなるでしょう。今回は、DXハイスクールとは何かがわかるように、概要をはじめ採択校・指定校の取り組み事例、メリット、課題などをご紹介します。

DXハイスクールとは?

DXハイスクールとは、全国の高校においてデジタル人材(デジタル等の成長分野を支える人材)の育成を強化する取り組みです。読み方は「ディーエックスハイスクール」であり、高等学校DX加速化推進事業の通称として知られるようになりました。

大学教育におけるデジタル・理数分野への学部転換の取り組みが進んでいることから、政策効果を最大限に高めるために、高校教育においてもデジタル人材の育成を強化する必要が生じています。

高等学校DX加速化推進事業では、校内でDXの加速によって探究的・文理横断的・実践的な学びを強化する高校に対して、必要な環境整備の経費を支援します。

DXハイスクールの補助対象・補助額

DXハイスクールの制度の仕組みを把握できるように、令和7年度・令和6年度の補助対象・補助額をご紹介します。

補助対象

令和7年度 公立・私立の高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部含む。)

都道府県

令和6年度 公立・私立の高等学校(中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部含む。)

補助額

令和7年度 継続校:500万円/校(1,000校程度) 

※重点類型の場合は700万円

新規採択校:1,000万円/校(200校程度) 

※重点類型の場合は1,200万円

都道府県による域内横断的な取組:1,000万円(47都道府県)

定額補助

令和6年度 1,000万円/校(1,000校程度)

定額補助

DXハイスクールの申請要件と支援内容

続いては、DXハイスクールの申請要件と支援内容について紹介します。

申請要件

DXハイスクールの申請要件の例は下記の通りです。

・情報Ⅱや数学ⅡB、数学ⅢCなどの履修推進

・情報、数学などを重視した学科への転換、コースの設置

・デジタルを活用した文理横断的、探究的な学びの実施

・デジタルものづくりなど生徒の興味関心を高めるデジタル課外活動の促進

・高大接続の強化や多面的な高校入試の実施

・地方の小規模校で従来開設されていない理数系科目(数学Ⅲ等)の遠隔授業実施

・専門高校においてデジタルを活用したスマート農業やインフラDX、医療、介護DXなどに対応した高度な専門教科指導の実施、高大接続の強化 

重点類型の場合は上記に加えて下記のような申請要件を満たす必要もあります。

・海外の連携校等への留学、外国人生徒の受入、外国語等による授業の実施、国内外の大学等と連携した取組の実施など

・文理横断的な学びに重点的に取り組む新しい普通科への学科転換

・産業界等と連携した最先端の職業人材育成の取組の実施

支援内容

DXハイスクールの支援内容の例は下記の通りです。

・ICT機器(ハイスペックPCや3Dプリンタ、動画・画像生成ソフトなど)の整備

・遠隔授業用を含む通信機器の整備

・理数教育設備の整備

・専門高校の高度な実習設備整備

・専門人材派遣等業務委託費

DXハイスクールの採択校・指定校の取組事例の一覧表

DXハイスクールの採択校・指定校はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

さまざまなエリアから高校をピックアップして具体的な取組事例を一覧表にまとめてみます。

エリア 高校 取り組み
北海道 北海道帯広農業高等学校 農業科学科ではスマート農業授業を実施。ドローンによる豆類の防除など実践的な学びを展開。
埼玉県 埼玉県立大宮東高等学校 デジタル技術によって獲得したデータを活用して健康科学分野で活躍するDX人材の育成を目指す。情報科の授業でプログラミングや3Dデザインの演習を実施。
神奈川県 神奈川県立西湘高等学校 バーチャルリアリティ(VR)技術の利用について⽣徒・職員が探究。Meta quest3を約60台導⼊。
大阪府 大阪府立桜宮高等学校 人間スポーツ科学科でスポーツ医科学分野におけるデジタル人材育成に取り組む。データサイエンスを含む実践的な学びを展開。

DXハイスクールを受験するメリット

DXハイスクールの取り組みを知り、興味を持った方も多いでしょう。中には、DXハイスクールを受験するメリットが気になった方もいるかもしれません。

引き続き、DXハイスクールを受験するメリットについて解説します

専門学科で専門知識を学べる

DXハイスクールは理数系の学科だけでなく、工業・商業・農業・水産などの専門学科を設置することもあります。

普通科では学べない最新の専門知識を高校生の段階で学ぶことが可能です。

すでに将来の夢が決まっている方にとって、DXハイスクールは必要な学びを提供して夢の実現を後押しする環境となり得ます。

実践的で高度なITスキルを習得できる

DXハイスクールは高大連携授業を開講することがあります。

たとえば、大学で学ぶAIやデータサイエンスの入門講義の一部を高校の授業で学ぶことも可能です。企業や団体との連携プロジェクト、インターンシップなどの学習機会も充実しています。

社会的連携により実践的なデジタルスキルを習得した高校生は、理想の進路を力強く切り開いていけるでしょう。

DXハイスクールの推進に伴う課題

DXハイスクールの取り組みが推進されると、デジタル人材の育成が促進される一方で教育業界に新たな課題が生じる恐れも想定されます。

今後の受験では、DXハイスクールの課題を把握したうえで進路を決定することも重要になるでしょう。引き続き、DXハイスクールの推進に伴う課題について解説します。

受験格差

DXハイスクールでは、通常の学校よりもICT機器の導入やデジタル教育が飛躍的に進みます。指定校と通常の学校の間でIT教育の質に格差が生じるリスクは極めて高いです。

情報系の学部や学科を目指す方であれば、ITスキルを実践的に習得できるDXハイスクールで学んだほうが、受験で有利になるかもしれません。

将来的に情報系(ITスキルの活用が不可欠)の学部や学科を志望するのであれば、受験格差の影響を受けないように、DXハイスクールの受験も視野に入れるべきだといえるでしょう。

情報系の学部や学科を目指すにあたって情報科目のテスト対策も重要になります。

情報科目のテスト対策については下記のページにまとめているので参考にしてみてください。

「情報科目」の記事一覧

学力低下

DXハイスクールでは情報系の授業の質が高まり、デジタルツールに触れる時間も増えます。ただ、生徒がITスキルの習得を重視して、通常の教科学習を軽んじるようになれば、基礎学力の低下が生じる恐れもあります。

大学受験の一般入試では基本的に、情報以外の各教科の得点で合否を決めるケースが多いです。

志望校によってはDXハイスクールのカリキュラムが適さないこともあるかもしれません。

DXハイスクールに関するよくある質問

ここまでの解説でDXハイスクールの全体像が見えてきたのではないでしょうか。DXハイスクールについてさらに理解を深められるように、DXハイスクールに関するよくある質問に回答します。

Q1.DXハイスクールピッチとは?

A1.DXハイスクールピッチは、DXハイスクールへの支援を表明している企業・団体などが、高校のDX推進に関する支援内容をプレゼンテーションする機会です。

支援者が、DXハイスクールにおける空間のイメージや、実際に構築した教室の事例、導入できるタブレット、パソコン、教員研修指導、講師派遣などについてアピールします。

2024年5月に開催されたDXハイスクールピッチには、株式会社サーティファイや株式会社内田洋行、インテル株式会社、日本統計学会などが参加しました。

プレゼン内容の動画については、デジタル庁教育DXサービスマップ実証事務局のホームページで公開されているので、気になった方は参考にしてみてください。

参照:DXハイスクールピッチ(デジタル庁教育DXサービスマップ実証事務局)

Q2.DXハイスクールとリーディングDXスクール、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の違いは?

A2.目的と育成を目指す人材に違いがあります。

リーディングDXスクールは、GIGA端末に標準で含まれるソフトやクラウド環境を活用して、児童生徒の情報活用能力の育成や、個別の最適な学びの充実、校務DXの実現などを目指す取り組みです。

SSHは先進的な科学技術や理科、数学教育によって生徒の科学的な探求能力を培い、社会をけん引する科学技術人材を育成する取り組みとして知られています。

DXハイスクールは、リーディングDXスクールとは違って情報活用能力の育成やDXが目的ではなく、あくまでデジタル人材の育成を主目的としています。SSHとも違って科学技術人材を育成するわけではありません。

まとめ

DXハイスクールによって全国的に高校でデジタル人材の育成が促進される流れについてご理解いただけたでしょう。

DXハイスクールに進学できれば、最新のデジタル環境で高度なITスキルを効率的に習得して、大学受験や就職活動を有利に進めやすくなります。

ただ、DXハイスクールの指定校は限られているため、すべての生徒が情報教育に特化した環境で学べるわけではないのが現実です。ですが、DXハイスクールでなくともIT教育に力を入れている高校や、指導力の高い情報教諭が在籍している高校をうまく選ぶことで、ITスキルを磨くことは不可能ではありません。

DXハイスクールの最新情報やIT教育に優れた学校について知りたい方、情報科目の勉強に不安がある方などは、Axisのオンライン家庭教師のホームページをご覧ください。