私立大学の定員割れは、補助金の支給や入試体制の動向に直結するため、受験生にも影響を与える事態です。受験や進学を成功させるためにも、定員割れについて理解を深めておいて損はありません。
今回は、私立大学の定員割れの概要をおさらいしつつ、事例や受験・進学に生じる影響、今後の入試動向などについて解説します。定員割れだと必ず合格できるのか気になる方もぜひお読みください。
目次
私立大学の定員割れとは?
私立大学における定員割れとは、募集定員よりも出願者数が少ない事態をさします。
たとえば、私立大学が50人の入学者を募集したとしましょう。30人しか出願してもらえなければ、定員割れが発生したことになります。
定員割れは出願倍率(出願者数÷募集定員)で確認可能です。1.0以下になると定員割れだと判断できます。
去年定員割れをしていれば必ず合格できるように思うかもしれませんが、あくまで私立大学が設定する基準点に到達しなければ落ちることになります。また、去年定員割れをしているからといって、今年も定員割れするとも限りません。
「定員割れ=合格」ではないことは最低限理解しておきましょう。
私立大学・短期大学で定員割れが発生した事例一覧【関東・関西】
近年、私立大学で定員割れが増加傾向です。関東・関西を問わず、さまざまな私立大学が公式ホームページで定員割れを理由とした学習募集停止のアナウンスをしています。定員割れした私立大学の事例をいくつかご紹介します。
川村学園女子大学
川村学園女子大学は、教養と資格を軸とした教育を展開している私立大学です。
教育学部および大学院の人文科学研究科では、2025年度以降の学生募集停止を決定しました。入学者数の定員割れが続き、教育学部・教育学専攻の維持が難しくなったとのことです。
18歳人口の現象、共学志向の高まりといった社会情勢の変化が要因として挙げられています。
今後も在学生が充実した学生生活を過ごせるように、就職支援や進路確保にも従来通り対応していくとのことです。
参照:【重要なお知らせ】教育学部及び教育学専攻の募集停止について(川村学園女子大学)
京都ノートルダム女子大学
京都ノートルダム女子大学は「徳と知」をモットーとする全人教育を教育理念に掲げている私立の女子大学です。
近年は定員割れの状況が続いてしまい、大学存続のためのあらゆる方策を進めた結果、2025年度の入学生を最後に募集停止という苦渋の決断を下しました。
すべての学生が卒業するまでは、充実した学生生活を過ごせるように教職員一同万全を期すとのことです。
城西短期大学
城西短期大学は、城西大学の建学の精神である「学問による人間形成」を理念に掲げ、1983年に城西大学女子短期大学部として開設され、2005年に男女共学になった私立の短期大学です。
18歳人口の減少と四年制大学志向といった近年の社会状況の変化に伴い、志願者が減少して定員割れが続いていました。
最終的に2024年4月の入学生の受け入れをもって学生募集を停止する決断が下されました。
運営法人は今後も社会の多様なニーズに対応できるよう、新学部や新学科などの構想を新たに進め、教育・研究の充実・強化を目指すとのことです。
ルーテル学院大学
ルーテル学院大学は、1909年に九州熊本で牧師の養成神学校として開学し、のちに東京に拠点を移して教育を展開している私立大学です。
キリスト教的人間理解に立った対人援助の人材を育てる使命を掲げ、社会福祉や臨床心理の分野における専門教育を実践しています。
近年は少子化傾向の影響により、2022年度から連続して定員割れが続いていました。
極小規模の単科大学として、現在の教育体制を維持できるように検討を重ねた結果、経営の継続が困難と判断され、2025年度より学生募集を停止することになりました。
すべての学生が卒業したあとも法人は残り、日本ルーテル神学校の教育と研究は続けていくとのことです。
参照:2025(令和7)年度以降の学生募集停止について(ルーテル学院大学)
佐久大学信州短期大学
佐久大学信州短期大学は、1988年に信州短期大学として開学し、地域に根差した高等教育機関として、時代のニーズに応じた人材育成に貢献してきた私立大学です。輩出した卒業生は5千名を超え、社会を支える人材として多方面で活躍しています。
近年の急速な少子化や四年制大学志向の高まりによって、定員割れが続いていました。
長期的な学生確保が困難と判断され、2025年4月の入学生の受け入れを最後に、学生募集を停止するという判断が下されています。
今後は短期大学部の学びを生かした「共生社会の構築に寄与できる佐久大学」として、新たに人材育成を進めていくとのことです。
参照:佐久大学信州短期大学部の学生募集停止について(佐久大学)
私立大学が定員割れするとどうなる?受験や進学に影響がある??
私立大学が定員割れすると、大学が補助金を受けられなくなり、受験生も修学支援を受けられなくなる恐れがあります。
たとえば、大学生が受けられる修学支援として修学支援新制度があります。修学支援新制度は、子どもの進学を支援するために授業料・入学金の免除あるいは減額、返還不要の給付型奨学金によって、大学の無償化をする制度です。2020年からスタートしました。
しかし文部科学省は2024年に、原則として「3年連続で学生が収容定員の8割未満」となるだけで支援制度の対象外とする形で、定員割れ大学へのペナルティを強化しました。
対象外となれば入学者が激減するリスクが高まります。私立大学にとっては死刑判決に等しいともいわれ、大学の存続にも関わる制度変更だったといえるでしょう。対応策として学部の定員を減らす私大も少なくありませんでした。
ただ2025年の時点で、基準以上に定員割れが続いた大学などへのペナルティを実質的に緩和する方針も決まりました。ペナルティが理由で大学や短大の撤退が続出し、制度を見直すことになったようです。
今後も制度改正によって私立大学における定員割れの状況は変化していく可能性があります。受験や進学にも関わるテーマであることから、定員割れに関する制度改正の動向にも注目しておきましょう。
定員確保に向けた私立大学の対策
私立大学が定員割れを起こさないようにするには、教育内容を改善したり、SNSでフォロワーを増やしたり、さまざまな対策が考えられます。
その中でも特に受験生に関係のある対策が、推薦入試の実施を推進することです。なぜ大学が推薦入試の実施を推進するのか詳しく解説します。
推薦入試の実施が推進される理由
私立大学では早期定員確保のために、学校推薦入試や総合選抜型入試など、一般入試よりも早く合格者を決める推薦入試制度を推進する動きが進んでいます。
国からも学力以外に、経験や資格など総合的な判断で入学者を選抜する入試方針が打ち出されているため、推薦入試の流れが加速していくにつれ早期合格発表もスタンダードになる可能性が高いです。
これから私立大学の受験に対応できるようにするには、学校推薦入試や総合選抜型入試の対策を視野に入れる必要性も高まるでしょう。
推薦入試では、共通テストの成績をはじめ、小論文や面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、志望理由書、資格試験の成績など、多角的な観点から選抜されます。
できれば高校入学時の早い段階から推薦入試も見据えておき、進路の早期決定や評定、資格といった出願条件のクリアを目指すのが望ましいです。
学校推薦入試や総合選抜型入試の概要や動向、進路を決める時期を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
学校推薦型入試に学力は重要? 基礎学力テストの導入事例、対策を解説!
総合型選抜入試とは? 入試内容やスケジュール日程、一般選抜入試との違い、対策などを解説!
総合型選抜入試を制するためには書類審査と小論文の早期対策が必須!
高校生の進路の決め方を解説! 決める上で大切なこと、決める時期は?【進路アドバイス付き】
MARCH以上の私立大学は今後も一般選抜が主流に
定員割れの回避対策として年内入試志向が高まっていますが、MARCHのように特定の大学群に関しては変化に違いが見受けられます。
MARCHは首都圏における人気の難関私立大学群です。
具体的な構成大学は下記の通りです。
・明治大学 (M)
・青山学院大学(A)
・立教大学 (R)
・中央大学 (C)
・法政大学 (H)
多くの私立大学が定員割れで苦しむ中、MARCHでは一般選抜の志願者が大きく増えており、受験生からの人気は高いです。
定員割れが目立つ近年においても、極端に出願者が減ることはしばらくないといわれており、今後も一般選抜が主流となる傾向が想定されます。
ただ、MARCHでも推薦入試が実施されており、一般選抜だけを視野に入れすぎると、貴重な受験のチャンスを失いかねません。
MARCHの概要とともに、推薦入試に対応したMARCHの大学を知りたい方は下記の記事もご覧ください。
MARCH(マーチ)とは!各大学の偏差値や特徴、就職先、著名な卒業生について紹介!
まとめ
定員割れは受験生にとってあまり関係がない出来事に見えますが、補助金の支給停止や入試体制の変更などにつながるため、受験や進学に大きな影響を与える可能性もあります。
大学が定員割れを回避するには受験生を増やし、たくさん合格させなければなりません。定員割れが目立つ近年において、推薦入試で早期合格発表を目指し、入学者を増やそうとする大学が今後は増えていくかもしれません。
時代の流れとともに入試の常識が変化しつつあります。理想の進路を勝ち取るために、推薦入試による受験は有力な選択肢となっていくでしょう。
推薦入試の動向や対策について詳しく知りたい方は弊社ホームページにて。