近年、大学入試で小論文の重要性が急激に上がっています。そこで、学部系統別にどのようなテーマの小論文が出題されたのかまとめました。今後の大学受験勉強にぜひご活用ください。
2021-2026年度大学入試の人文科学の小論文
人文科学は、人の考え方・行動や、そこから発生した現象を扱う学問です。対象範囲は非常に広いため、たくさんの種類の学部・学科に分かれています。大学によって名前も様々で、
文、社会、人文社会、人間社会、社会科学、生活科学、地域創造、哲学、美術、日本史、世界史、西洋史、東洋史、外国語、情報、情報社会などの名称の学部・学科があります。

人文科学の小論文の傾向
専攻内容を通して地域や社会の動きを主体的に見ているかどうかを問うテーマが多い学部・学科です。2021~2022年度入試では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「人との接触」「スポーツや芸術の意義」をテーマにした小論文や、SDGsをテーマにした小論文が多数見られました。
その後は、ジェンダー、LGBTや、SNSの使い方、SNSを利用したコミュニケーションについても触れている大学が見受けられます。ダイバーシティについてもテーマに上げている大学が見られ、ジェンダーやLGBTを加えた「多様性」についても取り上げる大学は依然多くなりそうです。
また、地元の受験生が多い大学と、受験生の出身地が幅広い大学とでテーマに違いがありました。前者は地元に根差したテーマが比較的多く、後者は日本全体で話題になっているテーマや、抽象的なテーマが多く出題されていました。さらにいくつかの大学では、地元に根差したテーマと抽象的なテーマの両方を出題していました。大学のカラーを明確にしたテーマが目立ちます。
テクノロジーの進歩と「人間性・倫理」の再定義(AI・倫理・科学)、異文化理解・多様性と社会的包摂(共生・ジェンダー・差別)、言語・歴史・文化・芸術の社会的意義(学問論・人文学の存在価値)、現代社会における「個人と他者・共同体」の関係性(自己・社会・心理)といったテーマを押さえておくと良いでしょう。
直近の入試で出題された小論文のテーマは以下のとおりです。
- 地域の有形文化財(弘前大学・人文社会科学部)
- 葬墓制の変化について(弘前大学・人文社会科学部)
- 異分野の知見の横断と「人文学からの学び」の意義(北海道大学・文学部 / 筑波大学・人文学類)
- 行動経済学(ナッジ)やAIの活用に伴う倫理的・社会的課題(北海道大学・文学部 / 慶應義塾大学・文学部)
- 民主主義と参政権のあり方(不適格者の投票制限への反論)(九州大学・文学部)
- 戦争責任・歴史的言説に対する個人の社会的責任(大阪公立大学・文学部)
- 言論・表現における「ウソ」と「真実」の社会的意味合い(神戸大学・文学部)
- 自然と技術の関係性および環境との相互作用(慶應義塾大学・文学部)
- 多様性と排除(人種・ジェンダー・都市再生における貧民排除問題)(長崎大学・多文化社会学部)
- 人間と生成AIの関係性および未来の学習・労働のあり方(北九州市立大学・文学部/外国語学部)
- 地方の若者の県外流出における影響(岩手大学・人文社会学部)
- 芸術・スポーツの地域社会に与える影響(岩手大学・人文社会学部)
- LGBT(岩手大学・人文社会学部)
- 祭礼行事(富山大学・人文学部)
- SNSとネット世論(富山大学・人文学部)
- SDGs、LRTの導入による地方と都市の接続(金沢大学・人間社会学域・地域創造学類)
- 人のコミュニケーション能力獲得、視点による戦争の捉え方の違い(金沢大学・人間社会学域・人文学類)
- 思いやり(お茶の水女子大学・文教育学部・人文科学科)
- 礼拝的価値(お茶の水女子大学・文教育学部・人文科学科)
- 人間のミス(一橋大学・社会学部)
- インターネット検索のメリット・デメリット(一橋大学・社会学部)
- 個人と社会の緊張と対立(慶応義塾大学・法学部)
- 夫婦別姓(上智大学・総合人間科学部・社会学科)
- 自然・自由・ダイバーシティを社会学科で学ぶことについて(静岡大学・人文社会科学部)
- 地域社会における国際化とマイノリティ(静岡大学・人文社会科学部)
- 共働き社会における結婚と家族(静岡大学・地域創造学環)
- 地域における学び(和歌山大学・経済学部)
- 災害やコロナ禍における生活者、ボランティア(鳥取大学・地域学部・地域学科・地域創造コース)
- 身近な地域の経済を発展させるための具体的な方法(鳥取大学・地域学部・地域学科・地域創造コース)
- プラスチックごみ(広島大学・総合科学部・総合科学科)
- 核のゴミの処理について(広島大学・総合科学部・総合科学科)
- 人や動物にとっての言語(山口大学・国際総合科学部)
- ジェンダー観(九州大学・文学部)
- 相互的な周囲との関係の再構成(琉球大学・人文社会学部・琉球アジア文化学科)
- AI倫理(琉球大学・人文社会学部・琉球アジア文化学科)
- 田舎での働き方(琉球大学・人文社会学部)
地元の産業・文化・環境の特性や、多様性に関連したテーマが多く出題されていました。

人文科学の小論文の対策
地域のことと、日本や世界全体での動きの両方に目を配るようにしましょう。その際に、自分が興味を持っている分野を通して考えるようにしてみてください。
例えば山火事のニュースを見たとき、防災の観点から見ると、「どうすればケガ人を出さずに避難できるか?」が気になるでしょう。歴史の観点から見ると、「消防車がなかった時代ではどのようにして山火事を消したのだろう?」が気になるかもしれません。宗教の観点から見ると、被災した人が立ち直るのに宗教がどのような役割を果たしてきたのかを調べるようになるかもしれません。環境問題の観点から見れば、焼き畑農業による砂漠化の進行に想像が飛躍するかもしれません。
普段そうしたことを考えた経験が少ないと、考える切り口を見つけるのに苦労するはずです。「なぜ?」「つまり?」「ということは?」といったキーワードを使ってみると、切り口が見つかりやすくなります。地域の自治体が発行している雑誌を見て、「子育ての話題が多い気がする。なぜだろう?」と考えてみるのも受験対策につながります。
自分の身近な地域をどう発展させていくかを問われることもあるので、日ごろから地元の地域が抱えている問題、その解決策など考えておくと良いでしょう。あわせて身近な問題だけではなく、全国的な社会的問題も日ごろからニュースでも取り上げられていますので、チェックしておきましょう。
「AI vs 人間」「伝統 vs 革新」「個人 vs 組織」といった構図に対して、どちらか一方を正解とせず、「なぜその対立が生まれるのか」「双方の限界と接点はどこか」という複雑さをそのまま引き受けて論じる姿勢と、「言葉」「歴史」「自由」「共感」などの一見わかりやすい言葉の定義の確認と再構築、具体的には筆者や自分の感覚に頼るだけでなく、「時代や文化が変わればその意味はどう変わるか」を掘り下げることを心がけておきましょう。
大学ごとのアドミッションポリシーを確認しておくことも、非常に重要です。志望大学がどのような学生を求めているのかを理解した上で、自分の意見を書きましょう。
各大学のアドミッションポリシーについては以下を参考にしてみてください。
小論文の書き方についてはこちらでも紹介しています。
手早く合格を取れる小論文の書き方とは?塾関係者が例文付きで解説!
まとめ
いかがでしょうか。人文科学は極めて範囲の広い学問です。「何」に興味があるかだけでなく、「どのように(どういう観点で)」興味があるかが問われます。そのため小論文のテーマも幅広くなり、対策が難しく思われがちです。しかし実際には、日ごろの興味の持ち方でずい分変えられます。
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