【2024年版】【大学別】大阪公立大学の過去2年分の小論文傾向

大学入試改革により、2021年度入試より小論文を入試科目として採用する大学が急増しました。実際にどういうテーマが出題されていたのかを紹介します。今後の受験勉強にぜひご活用ください。

2021-2022年度の大阪公立大学の小論文テーマ

2021年度から2024年度の大阪公立大学の小論文テーマ一覧は以下のとおりです。

年度 学部・学科(試験種別) 小論文の種類 テーマ
2024

 

現代システム科学域(一般前期)

 

課題文読み取り型 問題1. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:山口裕之、『「みんな違ってみんないい」のか?―相対主義と普遍主義の問題』、筑摩書房、2022年.ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した

問1. 下線部「両立しない意見の中から、どうにかして一つに決めなければならない場合」には、どのような場合が考えられるか。本文の例とは別の具体例を挙げて、100字以内 で説明しなさい。

問2. 「正しさは人それぞれ」や「みんなちがってみんないい」という主張には、どのような問題があるか。本文全体を通して筆者が指摘する問題について、200字以内で説明しなさい。

問3.  相対主義の問題点を克服するためにはどうすれば良いか。自らの経験に基づく具体例を挙げながら、あなたの考えを500字以内で述べなさい。

問題2. 次の「こども基本法」(抜粋)を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:「こども基本法」法令検索 e-GOV

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=504AC1000000077_20230401_000000 000000000 .ただし、引用にあたって一部の表記を省略または変更した

問1.  第三条に記されている基本理念に関して、実際にはどのような問題が生じているか。 具体的な事例を一つ挙げて、100字以内で記しなさい。

問2.  問1で記した事例の問題を解決する対応や方策として、考えられる案を200字以内で記しなさい。

問3.  問2で記した提案を実現するために、あなたの意見を表明できる機会が与えられたとします。その場で意見を表明することを想定し、なぜその提案が良いのかについて、この法律も参照しつつ、500字以内で自らの論を説得的に展開しなさい。

文学部(一般後期) 課題文読み取り型 問題. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:平野千果子『人種主義の歴史』(岩波書店、2022年)。ただし、作問に際し、 論旨を変えない範囲で部分的に改変した

問1. 下線部①新人種主義はそれを逆手にとったものであるについて、「それ」が指すのは「文化相対主義」である。その点を踏まえた上で、ヨーロッパにおいて 「新人種主義が文化相対主義を逆手にとる」とは、具体的にはどのようなことを指しているのか。「新人種主義」と「文化相対主義」がそれぞれどのような考えであるかが明確になるように、本文の内容に即して300字以内で説明せよ。

問2. 下線部②自分ではどうしようもないアイデンティティを与えられてしまうことがなぜ人種主義の対象となるといえるのか。本文の内容に即して200字以内で説明せよ。

問3. この著者は、「人種」という考え方がどのようにして生まれてきたと捉えているのかを説明せよ。そして、その捉え方を踏まえて、下線部③のいまの日本に必ずしも払拭されずに残っている状況とはどういう状況なのかを自分なりに考え、それにどう取り組んでいくべきかについて論じよ。なお、これらを合計500字以内で述べること。

法学部(一般後期) 課題文読み取り型 問題1. 次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

出典:小塚荘一郎『AIの時代と法』岩波新書、2019年,ただし、引用に当たって 一部の表記を省略し、一部を変更した

問1.  筆者は、「『コード(アーキテクチャ)が法に代わる』という現象は、AIが普及する時代に、ますます広がっていく」(下線部①)としているが、「コード(アーキテクチャ)が法に代わる」とはどういうことか、300字程度で説明せよ。

問2.  筆者は、デジタル技術の下で「コードが法に代わる」という現象が、「法の領域」が縮小していくということを意味している(下線部②)と述べているが、これはどういうことか。「法の領域」と「法意識」との違いを踏まえた上で、400字程度で説明せよ。

問題2.  次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

出典:神里達博「パンデミックが照らし出す『科学』と『政治』」『世界』2023年2月号、岩波書店ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した。

問1.  下線部①について、「科学によって政策を決めています」という言葉遣いはなぜ問題含みなのか、300字程度で説明せよ。

問2.  下線部②にいう「このようなタイプの問題」に関する政策を著者はどのように決めるべきであると述べているか、その理由もあわせて500字程度で説明せよ。

農学部(一般後期) テーマ読み取り型 問題.  三大栄養素の1つであるタンパク質の摂取は、現在食肉に大きく依存している。世界的な人口増加に加えて、新興国での食肉消費量の増加などにより、今後人類へのタンパク質供給が需要に追いつかなくなると予測されている。これを「タンパク質危機」と呼ぶ。さらに、畜産や水産による環境負荷も問題となっており、従来の畜産物や水産物とは異なる新しいタンパク質源(代替タンパク質)の研究開発が世界で進められいる。

タンパク質危機を解決するために研究開発されている代替タンパク質を1つあげ、それを日本で活用する場合の有用性と問題点、問題点に対する解決策について、あなたの考えを600字以上800字以内(句読点を含む)で論述せよ。

2023 現代システム科学域

(一般前期)

課題文読み取り型 問題1. 次のAおよびBの文章を読んで、あとの問いに答えよ。

A.    出典:森合正範,東京新聞TOKYOWeb,https://www.tokyo-np.co.jp/article/153312,2022年1月10日記事、正し、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した

B.    出典:忠鉢信一,朝日新聞デジタル,https://www.asahi.com/articles/ASQ573PTDQ4QUTQP027.html,2022年5月10日記事、ただし、引用にあたって一分の表記を省略し、一部を変更した

問1.  Aの文章と図が示すデータから、スポーツ指導現場における暴力行為について、具体的にどのような問題が浮かび上がっていると考えられるか、最近の傾向を分析し、150字以内で説明せよ。

問2.  Bの文章の下線部「割った市はその判断への違和感をぬぐえない」とあるが、筆者が追う考える理由について、どのようなことが考えられるか、文中で指摘されている問題点を踏まえ、120字以内で説明せよ。

問3.  AおよびBの文章では、スポーツ指導における様々な問題がそれぞれ示されている。これらを踏まえた上で、今後のスポーツ指導や学校での部活動指導の具体的な改善方法について、あなたの考えを450字以内で述べよ。

問題2.  次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

出典:丹野智文,「「認知症でもできること」から「認知症だからできること」へ」,「認知症とともにあたりまえに生きていく」,中央法規出版,2021年,ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した

問1.  下線部の「何も自分で決められない生活」とはどんな暮らしか、問題文に則して具体的に200字以内で説明せよ。

認知症とともに生きる人々に対して、家族や支援者が「管理や制限」をする理由を、筆者はどう考えているか、100字以内で説明せよ。

あなたのこれまでの認知症に関する理解と、この問題文に書かれていることを比較し、違いや共通点について記したうえで、今後の認知症の方への支援方法について、あなたの考えを400字以内で述べよ。

文学部(一般後期) 課題文読み取り型 問題. 次の文章を読み、あとの問いに答えよ。

出典:野矢茂樹,『語りえぬものを語る』,講談社学術文庫,2020年,ただし作問に際し、小見出しを削除して*に置き換えるなど、論旨を変えない範囲で部分的に改変した

問1.  筆者は下線部①で、「論理空間の成立と分節化された世界の成立は、どちらが先というものではなく、厳密に同時なのである」と述べている。「論理空間」と「世界の分節化」の意味を明確にしながら、下線部①で述べられていることを本文の内容に則して300字以内で説明せよ。

問2.  下線部②の「言語がなければいっさいは現物となる」とはどういうことか。本文の内容に則して200字以内で説明せよ。

反事実的可能性を想像することは、何に対して、どのような意味を持つと考えられるか。あなたの考えを500字以内で論述せよ。

法学部(一般後期 課題文読み取り型 問題1. 次の文章は、「法の解釈」について書かれたものである。この文章を読んで、あとの問いに答えよ。

出典:長尾龍一,『法哲学入門』,講談社,2007年、ただし、引用に当たって一部の表記を省略し、一部を変更した

問1.  筆者は、法解釈に関して「富士山理論」を提唱し、山の頂点から離れる距離に比例して、実質的正当化が要求されると述べているが(下線部①)、この考えを200字程度で説明せよ。

問2.  下線部②で、筆者は、「良い」法解釈の問題が、実定法的価値からの「良さ」の問題を超えて、超実定法的価値の問題へと発展すると述べているが、これはどういうことか、600字程度で説明せよ。

問題2. 次の文章を読んで、あとの問いに答えよ。

出典:永吉希久子,『移民と日本社会』,中央公論新社,2020年,ただし、引用に当たって一部の表記を省略し、一部を変更した

問1.  筆者の見解を踏まえると、社会保障制度が整っていない社会で、賃金の水準が固定的である場合、移民が増加するとどのような影響があると考えられるか、200字程度で説明せよ。

本稿において筆者が述べる、「古典的な労働力の需給関係の理論」と「二重労働市場理論」の違いについて、異なる点が明確になるように留意して、600字程度で説明せよ。

農学部(一般後期)

 

テーマ読み取り型 問題.  情報社会においては膨大なデータを扱うために常にIT(情報技術)を用いている。 AI(人工知能)を用いたアルゴリズム(計算手順)によるデータの検索や絞り込みは非常に便利であり、高い効率で目的の情報にたどり着くことができる反面、アルゴリズムに よっては扱うデータが限定されたり偏った情報が与えられるおそれがある。インターネットのEC(電子商取引)サイトやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で、閲覧履歴などから分析された利用者の好みに基づいた「おすすめ」にうんざりした経験がある人も多いはずである。

一方、自然科学においてはセレンディピティが重要だといわれている。セレンディピティとは「偶然的な出会い」を意味する言葉である。近代細菌学の祖とされるルイ・パスツールが「チャンスは心の準備ができている者を好む(Chance favors the prepared  mind)」と表したように、研究者には予期せずに偶然発見したものをつかみとるための不断の努力も必要である。

情報過多の時代にあって、自然科学者はITとどのように共存すべきか、あなたの考えを600字以上800字以内(句読点を含む)で論述せよ。

2022 現代システム科学域

(一般前期)

課題文読み取り型 問題1. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:宮本太郎『生活保障 排除しない社会へ』岩波書店、2009年。ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した。

問1. 下線部「私たちが当たり前と考えているこの道筋は決して合理的ではない」とは、どのような理由からか、100字以内で説明せよ。

問2. 図5-2から、デンマークとアメリカを比較し、若者のライフサイクルの違いを、150字以内で説明せよ。

問3. 教育と労働市場に双方向型の橋が架けられると、どのような社会になると考えられるか、筆者の意見を整理した上で、それに対するあなたの考えを450字以内で述べよ。

問題2. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:斎藤真緒「ケアする――ケアはジェンダーから自由になれるか」、伊藤公雄・牟田和恵[編]『ジェンダーで学ぶ社会学[全改新版]』世界思想社、2015年。ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した。

問1. 男性介護者の困難について本文に即して150字以内で説明せよ。

問2. 下線部(1)「「依存の否認」に依拠した近代的な人間像に対置する新しいモデル」とはどのようなものか、150字以内で説明せよ。

問3. 下線部(2)「ケアされる/ケアすることによって不利益を被らない社会的な仕組みを構築すること」とあるが、その不利益の具体的な事例を一つあげ、それを解消する仕組みについて、あなたの考えを400字以内で述べよ。

法学部

(一般後期)

課題文読み取り型 問題1. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:筒井淳也『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』光文社、2016年。ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した。

問1. 下線部①にいう「共働き社会が意図せざる結果として格差を広げる可能性」について、200字程度で説明せよ。

問2. 下線部②に「格差が所得格差ならば、近代国家における代表的な是正の手段はそこに課税、具体的には累進課税することです」とあるが、本文で扱われている課税方式の中で筆者が世帯格差是正に最も効果的と考える課税方式は何か。その内容、効果的と考える理由、および問題点について、他の課税方式と比較しながら、600字程度で説明せよ。

問題2. 次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

出典:長谷部恭男『法とは何か――法思想史入門』河出書房新社、2011年。ただし、引用にあたって一部の表記を省略し、一部を変更した。

問1.筆者の見解を踏まえて、法の支配の要請について、300字程度で具体的に説明せよ。

問2. 筆者の見解を踏まえて、法の支配の限界について、500字程度で説明せよ。

文学部

(一般後期)

課題文読み取り型 問題1. 次の文章を読み、あとの設問に答えよ。

出典:渡辺靖『〈文化〉を捉え直す――カルチュラル・セキュリティの発想』岩波新書、2015年。ただし、引用にあたり一部表記を変えた。

問1.下線部①の「構築主義(constructionism)とはどのような立場か、本質主義および相対主義と対比させながら、300字以内で説明せよ。

問2. 下線部②の”構築主義の考え方に立つと、「文化とは何か」という問いは一種のトートロジー(同語反復)に近くなる”とはどういうことか。文中に紹介されたエドワード・タイラーの「文化」の定義に即して、200字以内で説明せよ。

問3. このあと筆者は、境界線を可視化し、編み直すことで、”新たな「現実」を創出しようとする試み”(下線部③)の一例として芸術実践を挙げる。芸術実践に限らず、境界線を編み直すことによる” 新たな「現実」を創出しようとする試み”の実例、あるいは、あなたが境界線を編み直すことによるって”新たな「現実」を創出”してみたいと思うことを挙げ、その意義について、500字以内で論述せよ。

農学部

(一般後期)

課題文読み取り型 問題. 下記の文章を読み、現代のリスク社会において科学技術と人間が共生するために科学者はどのような役割を果たすべきか、科学技術の具体例を挙げながらあなたの考えを600-800字以内(句読点含む)で論述せよ。

出典:野家啓一『科学哲学への招待』筑摩書房、2015年。ただし、引用にあたり一部表記を変えた。

2021 法学部

(一般後期)

課題文読み取り型 問題1. リベラル・デモクラシーの変遷についての文章を読んで、設問に回答。

出典:樋口陽一『リベラル・デモクラシーの現在』岩波新書、2019年。

問1. 本文内容の要約をする問題。個人の権利の成り立ちについて、イギリスとフランスの型を比較する内容。400字以内。

問2. イギリスのEU離脱の背景となる権利の捉え方の説明を記述する問題。400字以内。

問題2. 国際法の有用性について述べた文章を読んで、設問に回答。

出典:大沼保昭『国際法』ちくま新書、2008年。

問1. 本文内容の一部を説明する問題。スポーツ、文学、芸術を政治の道具と捉えられているかどうかについての筆者の見解を説明する問題。200字以内。

問2. 国際法は現代の国際社会で有用なものかどうかと、その根拠を記述する問題。600字以内。

文学部

(一般後期)

課題文読み取り型 問題. 植物政策などによる植物種の国際的な移動の歴史について述べた文章を読んで、設問に回答。

出典:川島昭夫『植物園の世紀』

問1. 本文中の下線部内容の説明。植物は大地に束縛された存在ではなく、種子が荷物にまぎれこむなどして長い距離を移動してきたという内容。200字以内。

問2. 本文中の植民地植物園についての記述内容を要約する問題。300字以内。

問3. 植物と新型コロナウイルスの類似点と相違点を挙げ、人類への影響について記述する問題。500字以内。

 

 

2021-2024年度の大阪公立大学の小論文傾向

小論文の種類は課題文読み取り型が多い傾向です。2022・2023年度の農学部の問題は文章を読んだ上での、テーマ読み取り型と言えます。

2021・2022年度は、現代システム科学域が合計1600字で、他学部は合計1000字以下でした。2023年度から字数の変更が見られ、法学部が2023年度1600字、2024年度は1500字と大きく増えています。農学部は2023・2024年度は約800字と少し字数減になっています。

また、いずれの学部も学問にメインを置きつつ、学問と日常生活の話題をからめた内容をメインにしていました。
たとえば、新型コロナウイルスのような時事ネタも入っていましたが(2021年度・文学部)、テーマはあくまで植物の移動の歴史であり、コロナに偏ってはいませんでした。同様に、2022年度・法学部では夫婦共働き家庭と所得格差をテーマにしており、こちらも現在の日常になじみのある話題と課税方式とを組み合わせた内容でした。

2024年度の現代システム科学域は「こども基本法」という2023年4月に施行された法律からの問題でしたが、法律の内容を問われるのではなく、法律ができた社会背景を読み解く問題になっており、児童虐待、ヤングケアラー、子どもの貧困など、ニュースで取り上げられている問題を知っておけば論述しやすくなります。

受験生にとっては学問的内容を日常生活の知識や感覚から捉えられるので、取り組みやすいテーマと言えるでしょう。
そのため課題文は読みやすいですが、やや長いうえに記述する字数も比較的長めです。内容を整理しながら長文を読む練習をきっちりしておきましょう。

小論文の書き方についてはこちらでも紹介しています。

小論文の書き方 手早く合格を取れる小論文の書き方とは?塾関係者が例文付きで解説!

まとめ

いかがでしょうか。大阪公立大学の小論文入試は年々傾向が少しずつ変わってきていることが見て取れます。法学部は字数の増加、農学部はテーマ読み取り型になってきているので、出題内容に関する知識が求められます。

ただ、2021年度からどの学部も文章の読解力と、説得力のある論述が求められているのは変わりません。

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