近年、大学入試で小論文の重要性が急激に上がっています。そこで、学部系統別にどのようなテーマの小論文が出題されたのかまとめました。今後の大学受験勉強にぜひご活用ください。
2024年度大学入試の理学部の小論文
理学は、高校の数学や理科をさらに深く勉強し、そこで培った知識を使って世の中の自然現象を解明する学問です。工学や農学など他の学問に比べて基礎研究が中心になります。
大学によって専門分野が異なっており、農学生命科学、地球環境、生物資源産業、物質地球科学、海洋自然科学、地球惑星科学などの学部・学科に分かれています。
理学部の小論文の傾向
DNAやゲノムといった遺伝学の基礎内容のほかに、教授や准教授の専門分野を中心にした出題が目立ちました。他学部のような新型コロナウイルス感染症やSDGsといったワードが少なかったのも、理学部小論文の特徴と言えそうです。
2021~2024年度入試で出題された小論文のテーマは以下のとおりです。
- 地球の気温上昇と集中豪雨の関係(弘前大学・農学生命科学部・地域環境工学科)
- 土壌劣化の原因の違いについて(弘前大学・農学生命科学部・食料資源学科)
- ヒトゲノムの塩基配列と遺伝情報(富山大学・理学部・生物学科)※令和5年度まで小論文出題あり
- ゲノム解析(群馬大学・医学部・保健学科/お茶の水女子大学・理学部)発明・開発と生活の豊かさ、生物多様性の研究(東京大学・理科二類)
- DNA(上智大学・理工学部・物質生命理工学科)
- 電気陰性度とイオン化傾向について(兵庫県立大学・理学部・物質科学科/生命科学科 )
- 生体膜について(兵庫県立大学・理学部・物質科学科/生命科学科)
- 地震について(神戸大学・理学部・惑星学科)
- バイオプラスチックによる環境問題、野生鳥獣の資源利用化による利点と問題点(徳島大学・生物資源産業学部)
- 地球科学分野におけるSDGsの実践、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた研究テーマの提案(琉球大学・理学部・物質地球科学科・地学系)
- マイクロプラスチックのサンゴ礁への影響、若さ・老いの認識(琉球大学・理学部・海洋自然科学科・生態系)
- 外来生物が在来種に及ぼす影響と行政による対策(琉球大学・理学部・海洋自然科学科・生態系)
- 無重力空間で体重を測る方法、過去の物理の授業で印象に残ったこと(琉球大学・理学部・物質地球科学科・物理系)
- クラゲが自然淘汰されない理由(琉球大学・理学部・海洋自然科学科・生物系)
理学部の小論文の対策
東大や上智大のような一部の難関大学を除くと、各大学の研究者の専門分野によって出題内容が変わります。では、その傾向に合わせて志望大学の研究者の専門分野について勉強しておかないといけないかと言うと、その必要はありません。
大学側が小論文で確認したいのは、下記の3点です。
- 数値を見て傾向分析・原因考察・仮説設定ができるか
- 専門分野への主体的な興味があるか(単にその科目が得意だから推薦入試を受けるというのは圧倒的に不利)
- 論理的な思考力があるか
数値を見て傾向分析・原因考察・仮説設定ができるか
まずは図表の見方・考察の仕方を練習して身につけましょう。『セミナー』や『リード』、共通テスト対策問題集など、通常の大学受験の生物や化学の問題集でこの力を養えます。苦手意識を持っている受験生もいますが、きちんと取り組みましょう。
専門分野への主体的な興味があるか
2つ目の「興味があるか」は、もちろん志望する学部の内容なのであるはずです。また、興味の対象については本を読むかネットで調べるようにしましょう。何をするために何の研究をしたいかが自分でも曖昧になりがちです。興味のある内容を調べることで具体的な知識を習得していきましょう。具体的な知識があれば、興味の対象と興味を持つ理由を明確化できます。知識が無いと答えられないので、しっかり対策しておきましょう。
論理的な思考力があるか
最後の「論理的な思考力」は、図表を見て、図表の数値に基づいた分析・考察・仮説設定ができれば十分あると言えます。「論理的思考力がある」というのは、言い換えれば、「論理的思考の仕方を知っている・使っている」ということです。図表を見て分析・考察をするのに論理的思考を使いますから、これで十分です。東大など一部の大学を除き、大抵の大学は高校生にそれ以上の力を求めません。
また、大抵の理系の受験生は、自分の考えを原稿用紙1-2枚程度の長さの文章にすることに慣れていません。図表の見方や考察の仕方に違和感がないか、小論文の書き方が人に伝わる書き方になっているかを人に見てもらって添削してもらうようにしましょう。
小論文の書き方についてはこちらでも紹介しています。
手早く合格を取れる小論文の書き方とは?塾関係者が例文付きで解説!
まとめ
いかがでしょうか。理学部は基礎研究を扱う学問ですが、小論文となると、具体的な興味やその背景知識の大枠を持っている受験生のほうがかなり有利です。日頃から興味を突き詰めて考えたり調べたりする習慣を作るようにしましょう。
小論文対策の準備を早める学生が増えてきています。いつから受験対策を始めればいいかご不安な方は、ぜひ弊社のホームページをご覧ください。