物質の同定とは? 同定方法・同定手段、中学受験の入試問題を解説!

中学受験の理科試験で出題されるテーマの1つが物質の同定です。難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、ポイントを押さえておくだけで簡単に正解できる問題もあり、得点源となっています。今回は物質の同定について意味をおさらいしつつ、代表的な同定方法・同定手段を簡単に解説します。実際に物質の同定をテーマとした中学受験の入試問題も掲載してみました。入試で理科の得点を増やしたいお子様、保護者様はぜひ最後までご覧ください。

物質の同定とは?

物質の同定とは、単離した化学物質が何であるかを判明させることです。

実験室で容器のラベルが濡れてはがれてしまっても、物質の同定ができれば再び各容器の物質を判明させ、ラベリングできます。

中学受験の範囲では、見た目は同じように見えるけれど、実際には性質の違う化学物質が多く登場します。入試でも複数の化学物資をさまざまな処理によって正体を明らかにするという実験問題が出題されることもあります。

難しい計算は基本的に必要ありません。処理に対する反応結果を覚えていれば、化学物質が何であるかすぐにわかり、簡単に答えがわかることもあります。

物質の同定というと難しい印象がありますが、毛嫌いせずに処理と反応結果をきちんと整理して覚えておきましょう。

物質の同定方法・同定手段の種類

物質の同定方法・同定手段にはいくつか種類があります。中学受験の範囲内で同定に使われる処理はおおよそ決まっています。

引き続き、同定方法・同定手段の種類について代表的なパターンを学んでみましょう。

水と混ぜる

化学物質を水と混ぜて結果を比較する方法があります。

化学物質は水に溶ける物質と溶けない物質に分かれます。溶けると水溶液は透明になる一方で、溶けないと白く濁った状態になり、時間が経つと下のほうに沈殿します。

透明か白く濁るかの違いで物質を判別できるということです。

特別な薬品が必要ないので、簡単に試せる方法だといえるでしょう。

フェノールフタレイン溶液と混ぜる

化学物質を水に溶かした水溶液に、フェノールフタレイン溶液を混ぜて結果を比較する方法があります。

フェノールフタレイン溶液は、粉末状のフェノールフタレインをエタノールなどに溶かした水溶液です。アルカリ性の検出に使われています。

酸性・中性の水溶液と混ぜても色は変わらず無色のままですが、アルカリ性の水溶液と混ぜると赤色に染まります。

混ぜた結果、無色のままか赤色になるか確認すれば、化学物質の正体を特定できるということです。

薄い塩酸と混ぜる

化学物質に薄い塩酸を混ぜたときの結果を比較する方法があります。

薄い塩酸を加えたとき、気体が発生する化学物質と、気体が発生しない化学物質に分かれます。気体発生の有無によって化学物質の正体を突き止められるということです。

たとえば、炭酸水素ナトリウムと薄い塩酸を反応させると、二酸化炭素と水、塩化ナトリウムが生じます。その一方で、塩化ナトリウムに塩酸を加えても気体は発生しません。

それぞれの物質を見た目で区別できなくても、気体が発生すれば炭酸水素ナトリウムだとわかります。

水溶液に電流を流す

化学物質の水溶液に電流を流して結果を比較する方法があります。

電源装置と水溶液の入った試験管、電流計で直列回路を作って電圧をかけた場合、電流が流れる場合と電流が流れない場合に結果が分かれます。通電するかしないかで化学物質の正体を確かめられるということです。

具体例として、電流を流したとき水酸化カルシウム水溶液は電流計の針が触れるのに対し、砂糖水は針が触れません。

ちなみにエタノールやメタノールといったアルコール水溶液も電流は流れないので、あわせて覚えておくとよいでしょう。

物質の同定に関する中学一般入試問題(2021年度海城中学高等学校)

ここまでの説明で物質の同定の意味や方法などについてご理解いただけたでしょう。

物質の同定は、難関中学の入試問題で出題されることがありますが、最低限の知識を押さえておくだけで解ける問題も少なくありません。確実に勉強をしておきたいトピックです。

引き続き、物質の同定に関する中学一般入試問題を掲載するので、中学受験に挑戦するお子様・保護者様はぜひ一緒に確認してみてください。

フェノールフタレイン溶液と水への溶解による同定の問題

2021年度の海城中学高等学校の中学一般入試では、フェノールフタレイン溶液と水への溶解によって固体を同定する実験問題が出題されました。

問題と解答、解説は下記の通りです。

【問題】

次の①、②の実験結果にあてはまる物質を、ア~エからそれぞれ1つずつ選び、記号で答えなさい。

①Bの実験で、うすく赤色になる。
②Dの実験で、ほとんど溶けないでにごる。

<Bの実験>

水の入った4つのビーカーに、それぞれの固体を入れてよくかき混ぜ、フェノールフタレインを加えた。

<Dの実験>

100gの水の入った4つのビーカーに、固体をそれぞれ5gずつ入れてよくかき混ぜた。

<実験対象の固体>

ア 炭酸水素ナトリウム
イ 水酸化カルシウム
ウ 塩化ナトリウム
エ 砂糖

参照:2021年度の海城中学高等学校の中学一般入試
※記事化にあたり一部表現を微調整しています。

実験の様子と結果、実際の問題については下の動画で確認できるので、詳細をチェックしてみてください。

【解答】

①ア ②イ

【解説】

<①の解説>

Bの実験結果は下記の通りです。

炭酸水素ナトリウム:薄い赤色になる
水酸化カルシウム:濃い赤色になる
塩化ナトリウム:変化なし
砂糖:変化なし

すでにお伝えした通り、フェノールフタレイン溶液は酸性・中性に対しては無色ですが、アルカリ性に反応して赤色に変わります。アルカリ性が強いほど濃い赤色になります。

炭酸水素ナトリウムは弱いアルカリ性なので薄い赤色、水酸化カルシウムは強いアルカリ性なので濃い赤色です。

塩化ナトリウムと砂糖の水溶液は中性であり、色は変わりません。

<②の解説>

Dの実験結果は下記の通りです。

炭酸水素ナトリウム:ほとんど水に溶ける
水酸化カルシウム:ほとんど溶けず白く濁り沈殿した
塩化ナトリウム:水に溶ける
砂糖:水に溶ける

「水酸化カルシウムを水に溶かしたのが石灰水」だと覚えている人は、水酸化カルシウムは水に溶けるのではないかと、不思議に思ったかもしれません。

水酸化カルシウムは25度の水100mlに約0.16gしか溶けません。

しばらく放置すると下に水酸化カルシウムが沈殿し、上に水酸化カルシウムが水に溶けた石灰水ができます。

水酸化カルシウムは完全に水に溶けないというわけではなく、一部は溶けて石灰水になるということを覚えておきましょう。

【中学入試問題に挑戦!】物質の同定|海城中学高等学校2021年

このような問題に慣れておくために、過去問に取り組んだり、模試を受験しておくことは非常に重要です。

以下、模試の種類や日程について解説しています。あわせてご確認ください。

首都圏の中学受験向け模擬試験16選! 実施日程(実施月)も一挙紹介

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まとめ

物質の同定は単離した化学物質が何であるかを判明させることです。水やフェノールフタレイン溶液、塩酸などと混ぜて結果を比べることで、簡単に同定できることがおわかりいただけたでしょう。

物質の同定は、今回ご紹介した通り海城中学高等学校のような名門校でも出題されており、難関校を目指すお子様も確実に理解しておきたいテーマとなっています。

そのほかにも、実験を理解していれば簡単に得点できる入試問題はたくさんあります。プラスチックの種類をテーマとした入試問題もよい例です。

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