私立医学部入試の実態とは?本当に合格できる対策もあわせて解説

私立医学部入試を深掘る

医学部の中でも、私立の医学部に照準を定めている人は多いです。国公立は共通テストと二次の両方を対策する必要があり、入試までに対策が間に合わないからです。とはいえ、私立は少なくとも3校、大抵は5校以上受けます。ここでは、私立医学部入試の実態と、本当に取るべき入試対策を紹介します。

私立医学部入試の実態

医学部は出願者数が毎年増加していましたが、ここ数年で状況は変わってきました。私立医学部2018年度から減少に転じています。それでも2000年代と比べて出願者数は約1.6倍に増えており、100倍を超える倍率の大学もあります。倍率がはね上がったことで、私立医学部の入試状況は変わりました。

30年前と比べて偏差値が急上昇

まず一番大きな違いは、偏差値の急激な上昇です。2000年以前は偏差値50程度の私立大もいくつかあり、決して最難関ではありませんでした。今では河合塾のデータで、最低でも偏差値60以上、ほとんどは65以上となっています。そのため、医学部の難しさが「東大並み」と称されるほどになりました。

医系予備校のアピールが激化

次に、競争がハイレベルで激化したことで、専門の予備校が乱立するようになりました。有力な医系予備校の大半はこの15年ほどの間に創設されています。今では大学や医系予備校が合同で医学部セミナーや入試説明会を毎年たくさん開いています。

そうしたセミナーや入試説明会では決まって、医学部入試の特異性や大学別の対策の必要性が強くアピールされています。

独特な入試問題

私立は医学部専用の入試問題を課します。医療系のテーマで出題する大学もあり、他学部の入試と傾向が大きく異なっています。大抵の大学で小論文も課されます。小論文や面接では受験生のコミュニケーション能力や人柄を知るため、「『顔について考えを述べよ』」(愛知医科大)、「『3年間付き合った恋人に別れの手紙を書いてください』」(岩手医科大)のような、独特な入試問題が出題されて毎年話題になっています。

医系予備校のセミナーでもこうした独特な入試問題は紹介され、「だから私立医学部入試は特別な対策が必要」と強く主張されています。

本当に取るべき入試対策

では、本当に私立医学部入試は特別な対策が必要なのでしょうか。

結論を言うと、そこまで特別な対策は必要ありません。もちろん、大学別に過去問を解いたり、小論文のテーマに合わせた対策をしたりする必要はあります。ですが、「特別な対策」を意識して、的を絞り過ぎた学習方法に手を出さないほうが賢明です。

理由は、小論を除くと入試問題がそこまで難関ではないからです。最難関の理工系学部の入試問題は難易度の高い問題を多く出題しており、知識の活用を高いレベルで求める問題です。それに対して私立医学部は、短い時間内に多量の問題を解かせる傾向があります。難問が出ないわけではありませんが、難問で差がつくことは稀です。むしろ、標準レベルの問題での全問正解が必要です。その点に高いレベルを求められる入試なのです。

ここがPOINT
・基本事項を満遍なく勉強する
・語句や解法の意味を理解する
・小論文対策は早めに始める

 基本事項を満遍なく勉強する

標準レベルの問題を取りこぼさないようにするには、教科書の応用レベルの公式や解法を余さず理解し、速く正確に解けるようになるまで繰り返し演習しましょう。当たり前のように聞こえますが、その当たり前をハイレベルに実践できるかどうかがポイントです。

大学別の傾向に合わせた対策は、効果が薄いだけでなく、場合によっては致命的です。センターテストや共通テストと違い、大学別の入試は、その大学の担当者が問題を作成します。担当者が変われば問題傾向も大きく変わります。2017年の日本医科大や2018年の東京医科大がその一例です。問題の難易度が上がったり、それまで出題されていなかった自由英作が出題されたりしました。自由英作の勉強をしていなかった受験生は非常に苦労したと思います。

過去問を解き慣れて、時間配分や解き方を身につけておくことは必要です。ただ、傾向に合わせた対策に力を入れ過ぎていると、傾向が変わったときについていけなくなります。

また、大抵の医学部受験生は5校以上受験します。5校も受ければ、ある大学で出題頻度の低い単元が別の大学で出題頻度が高くなっているケースもよくあります。傾向の異なる大学をいくつも受けるわけですから、結局ほとんどの範囲がいずれかの大学で出題されます。最初から範囲を絞って勉強するよりも、満遍なく勉強して最後に過去問演習に入るほうが効率的です。

語句や解法の意味を理解する

標準レベルでの正答率を高める方法として、解法の暗記に頼る人もいます。実際、英単語のように、暗記していないとどうにもならないものもあります。暗記をがんばれば、正解できる問題も短期間で急激に増やせます。

ですが、医学部入試に関してはこの方法はあまり有効ではありません。暗記で解ける問題が限られており、それだけでは合格ラインを越えられないからです。定期テストのように問題集から数字だけ変えて出題されるなんてことはありません。高いレベルで正しく理解するからこそ、どの問題にも正確に対応できるようになります。

そのためには、語句や公式・解法の意味を理解するようにしましょう。自分が理解できたかどうかは、人に説明すれば分かります。説明しながら自分の言葉に納得感がなければ(自分で自分が何を言っているか分からなければ)、理解できていないのです。

小論文対策は早めに始める

最後に、小論文の対策は早めに始めましょう。私立の医学部は大抵小論文が出題されます。他学部の小論文対策なら入試直前でも間に合いますが、医学部は最低3か月以上、できれば6か月以上前には始めておきましょう。他学部の小論文入試が「正しい筋道で書けているかどうか」を見るのに対して、医学部の小論文入試は「人柄やコミュニケーション能力」を見ているからです。

医師は患者さんとのやり取りをしたり、医療現場でチームリーダーをします。そのため、相手の立場に立って話をしたり、イレギュラーな状況での対応力を要求されます。言葉にすると単純ですが、簡単ではありません。

前述の「顔について論じなさい」という問題でも、「左右対称の顔がきれいだ」などの解答を書くとマイナスになるかもしれません。医学部入試の小論文は、医師になる適性があるかどうかを図る試験です。事故や病気で顔にゆがみが生じた患者さんに向かって「左右対称の顔がきれいだ」と言ってしまうと、前後の文脈が何であれ、その患者さんの心を傷つけかねません。

これらは意識をすれば何とかなるというものではありません。自分が知らないことに関して配慮して解答を書くのは大変難しいからです。逆に言うと、知っていれば配慮して解答を書きやすくなります。医療ニュースはもちろん、人文系の小論テーマをまとめた参考書を読んでおくと、知識を幅広く補充できます。

参考書を読んだ後、その知識を使って小論文を書いてみましょう。知識についての理解が深まり、様々なテーマについて考えたり判断したりする材料にできます。

知識を思考材料に昇華するのは時間がかかります。だから、入試の6か月以上前には小論文の勉強を始めておいたほうがいいのです

まとめ

いかがでしょうか。医学部入試は競争が激しくなり、一筋縄ではいかなくなりました。
それでも東大のような難問を解く力は必要ありません。正しい知識構造を作り、高い正答率を目指せば合格に近づけます。
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