2020年度より大学入試で小論文が出題されるケースが非常に多くなりました。ところが対策の仕方が分からず、苦手意識を持っている人は多いです。実は、小論文は目的と構成を押さえれば合格ラインを越えやすい科目です。ここでは、合格を取れる小論文の書き方を紹介します。
目次
小論文の書き方
改行の仕方や語尾の統一などの基本ルールはほとんどの人が知っていると思います。基本ルールの説明は省略して、そもそも小論文はどう書くのかという大枠を説明します。
まずは、小論文の特徴や構成を正しく理解しましょう。
小論文は、単に思ったことをまとめる作文や感想文とは異なり、常に根拠や理由を明確に示す必要があります。論理の筋道を意識して書くことで、読み手に納得感を与えると同時に、自身の思考整理にも大いに役立ちます。結論から逆算して、序論・本論・結論の全体像を意識しながら執筆することが重要です。
出題形式にはさまざまな種類があり、テーマによっては資料を読み解いたり、統計データを分析するケースも存在します。事前に幅広い知識をリサーチし、どのパターンにも対応できる下地を作っておくと安心です。特に時事問題に関するテーマが多い傾向にあるため、普段からニュースや新聞などで社会的課題に目を向けることも効果的でしょう。
書き始める前には全体の構成をメモとして書き留め、自分が何を主張したいのかをはっきりさせると執筆がスムーズになります。論点があいまいになると話が散漫になりやすいため、序論で示したテーマに対してどのような根拠を示すかを明確にしておくと良いでしょう。
小論文と作文(感想文)との違い
多くの人が見落としがちですが、作文との違いが一番大切なポイントです。違いを見てみましょう。
- 作文:自分の体験や感想を書く
- 小論文:自分の意見を書いて、読み手に納得してもらう
作文は「楽しかった」などの感想なので、楽しんでいる様子を読み手がイメージしやすいように書く文章力が求められます。それに対して小論文は読み手に納得してもらうための文章です。「決められた筋道」どおりに書くので、文章力は必要ありません。こうした違いがあるため、作文とは書き方が全く異なります。
一般的に作文や感想文では個人的な感想やエピソードを中心に書き進めますが、小論文では論理的な主張とそれを支える客観的な根拠が不可欠になります。たとえば、ある社会問題をテーマに取り上げる場合、数字やデータを挙げて分析し、そのうえで自分の意見を展開する必要があります。単純に「こう思う」で終わらず、なぜそう考えるのかを明確に説明する点が大きな違いです。
小論文の構成
では、決められた道筋とは何でしょうか?
それは、文章の構成順に3つのパートに分かれます。
小論文の基本構成は序論、本論、結論の3部構成で成り立っています。
序論では問題設定や自分の立場を提示し、本論で具体的な根拠や実例を示すことで説得力を高めます。最後に結論で全体を簡潔にまとめ、主張を再確認することで、読み手にわかりやすい流れを提供します。
- 序論
- 本論
- 結論・まとめ
①序論
最初に自分の意見を述べます。理由など細かい内容は書きません。意見の詳細は後のパートで述べるようにします。
②本論
自分と反対の意見を提示し、それに反証するように論じます。自分の意見だけ書くよりも、反対意見とそれへの反論も書いているほうが、説得力が増します。
③結論・まとめ
自分の意見の根拠を書きます。ここが最も重要なパートです。なぜ重要かは後程説明します。
例文は短くしてありますが、実際にはもっとしっかり書きます。
最初に述べた自分の意見を繰り返します。最初と最後に2回意見を述べると「この人の意見は~なんだな」と伝わりやすくなります。
- 序論:高校生は勉強すべきと考える。
- 本論:たしかに、高校生は様々な活動をして見識を広めるべきだという意見がある。しかし、費やしている時間の長い活動のほうが重要だ。
- 結論:高校生にとって一番長く時間を使っている活動は勉強だ。それゆえ、高校生は勉強すべきだ。
小論文の種類
種類は大きく4つに分かれます。
- テーマ読みとり型小論文
- 課題文読みとり型小論文
- グラフ等読みとり型小論文
- 教科型小論文
①テーマ読みとり型小論文
「~について論じなさい」などのように、テーマが与えられてそれについて論じるタイプです。災害時のボランティアやSDGsなどのタイムリーな社会的テーマや、学部の専門分野に関するテーマが良く出題されます。
②課題文読みとり型小論文
一番多い出題形式です。課題文を読んで、その内容について自分の意見を書くタイプです。「日本文化の『間』について」「紙の本の将来について」など、高校生にとってあまりなじみのないテーマの文章が出てくる入試問題が多いです。著者の論点を読み取る読解力に加えて、出題者の意図を想像し、それに合わせて自分の意見をまとめる力が必要です。
③グラフ等読みとり型小論文
グラフや表を見てそこから読み取れる結果をまとめたり、その結果が出ている理由を考察したりするタイプです。グラフや表が何についてのデータで、データの特徴を読み取る必要があります。
④教科型小論文
理科の論述や数学の証明、英文読解など、他の教科の知識を使って書くタイプです。小論文という科目名になっていますが、実際には他の教科の学力を求める問題です。
この4種類を小論文としての難易度順に並べると、
①>②>③>④の順に難しいです。(①が一番難しいです)
受験予定の大学や、受験するかもしれない大学(共通テストの結果次第など)の小論文のタイプを確認しておきましょう。①②のタイプであれば慣れるのに時間がかかります。遅くても入試の3-6か月前までには小論文の勉強を始めておくほうが良いでしょう。原稿用紙、答案用紙の基本の使い方からわからない人は、もっと早くに対策を始めておいてください。
どのテーマであっても、問われている内容から逸脱しないように、しっかり答案を埋めていきましょう。
小論文の頻出テーマ
ニュースで報道される世界的な問題から地方創生についてなど、テーマは学部によって様々ですが、どの学部でも比較的よく見られるテーマは以下の通りです。
特にテーマ読み取り型、課題文読み取り型に良く見られます。頻出テーマについての問題点や解決策などを説明できるようにしておきましょう。
・SDGs
・AI技術
・新型ウイルスによる影響
・ウクライナ侵攻などの世界情勢
・経済格差、教育格差
・少子高齢化
・グローバル化 など
以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
最低限の努力で上達!合格を取れる小論文の書き方
小論文を難しいと感じる人は、完璧を求めすぎるあまり、「書いているうちに迷子になる」「800-1200字も書けない」といった悩みに陥りがちです。小論文は満点を取りに行く科目ではありません。そこに着目すれば、安定して合格ラインに向かうコツが見えてきます。小論文を成功させる秘訣は「分解」です。
パートごとにメモを作る
前述のように、小論文は「序論」「本論」「結論・まとめ」の3パートに分かれています。まず、パートごとにメモを作りましょう。そして、そのメモを見て書けばいいのです。これで迷子になりません。単純なやり方ですが、極めて有効です。
例えば先ほどの「高校生は勉強すべきか?」という問いへの解答のメモを書くと、下記のようになります。
- (a. 序論)勉強すべき
- (b. 本論)様々な活動→見識を広めるべきという意見もあるが、高校生は、授業を受ける時間が長い
- (c. 結論・まとめ)高校生は、授業を受ける時間が長い=勉強時間が長いので勉強すべき
メモを順番に並べただけですが、これだけでも一応、主張が読み手に伝わります。後は、この流れを変えずに内容をふくらませばいいだけです。
「結論の根拠」をふくらませる
ただし、4つのパート全てをふくらませようとすると、話の流れが変わったり、何を言いたいのか分からなくなってしまいます。そうなると減点してしまうことが多いです。ふくらませるのは「結論」のパートだけでいいです。意見の「根拠」を書くパートですね。
なぜなら、前述のように小論文の目的は「読み手に納得してもらうこと」だからです。いくら結論を詳細に説明しても、根拠に納得してもらえなければ自分の意見に納得してもらえません。実際の事例や統計データを活用することで、読み手に説得力を与えることができます。
根拠は数字を入れると、内容が具体的になり納得感が出ます。例えば、先ほどの「高校生は勉強すべきか」というテーマに対して「結論の根拠」に数字を入れると、以下のようになります。
- (a. 序論)高校生は勉強すべきだと考える。
- (b. 本論)たしかに、様々な活動をして見識を広めるべきだという意見がある。しかし、私は一日の中で一番長く行う活動が、高校生にとって一番重要な活動だと考えている。
- (c. 結論・まとめ【根拠】)実際、一般的な高校生の一日の活動時間は、睡眠時間を除くと17時間くらいだ。朝8時半から夕方16時半まで学校にいるとすると、8時間は学校にいる計算になる。要するに、活動時間17時間のうち5割近くは学校での活動だ。そして、学校での活動時間の8割近くを授業が占めている。宿題に費やす時間を含めると、勉強をしている時間はさらに長くなる。つまり、一日の中で一番長い活動時間を使っているのは勉強なのだ。したがって、高校生は勉強すべきだと考える。
これだけでも「なぜ勉強すべきと考えているか」が伝わります。さらに、根拠の中に「その先」を入れると根拠の納得感がさらに高まります。例えば、以下のような流れで書きます。
「勉強をたくさんする→科学的思考が身につく→仕事の質が上がる→給料が上がる→買いたいものが買える→人生の幸福感が上がる→だから勉強すべき」
小論文の構成はすべて同じですので、どのテーマでも使えます。パートごとにメモを作る。根拠に数字と「その先」を入れる。これだけで小論文はほぼ完成です。迷子にならず、字数も相当稼げます。
テーマで迷子になったら接続詞を入れてみる
テーマ読みとり型の小論文の場合、テーマを見ただけでは何を書いていいか分からない場合があります。例えば、「平和と争いについて論じなさい」などです。平和と争いの何について論ずればいいのか分かりにくいです。
テーマ読みとり型で2つの語句が提示された場合、聞かれているのは「語句間の関係性」です。言いかえると「平和と争いの関係について論じなさい」という問題なのです。ではどうやって関係性を考えればいいかと言うと、「平和」「争い」といった語句の間に、対比か順接の接続詞を入れると分かりやすくなります。
例えば、「平和」と「争い」の間に対比の接続詞である「一方」「それに対して」という言葉を入れてみましょう。
私は、平和を望む人がいる一方で、争いを望む人もいると考える。
なぜなら、争いごとを避けて平和に暮らしている人がいるのに対して、自ら争いをしかける人もいるからだ。
また、「順接」にするなら、「だから」という言葉を加えると分かりやすくなります。
私は、平和を望むから争いが起こるのだと考える。
なぜなら、争いが起こるのは「自分の平和を脅かされると感じたとき」と「自分が平和な状態にいないと感じたとき」ではないだろうか。平和を望んでいるから争いが起こるのだ。
対比と順接のどちらで書いても問題はありません。対比か順接を語句の間に入れてみて、書きやすいほうで書けば大丈夫です。
まとめ
いかがでしょうか。小論文もやり方次第で難易度が変わります。
小論文は、論理性と客観的な根拠が求められる独自の文章形式です。序論・本論・結論の三部構成を基本に、テーマを的確に提起しながら具体的な理由やデータで主張を補強することが大切です。
最小限の努力で合格を勝ち取るためには、パートごとにメモを作り、根拠をふくらませ、接続詞を使って論点を整理し続けることがコツです。定番の頻出テーマに対して事前に知識を蓄えながら、書き方の技術を磨いていきましょう。
作成した小論文に対して意見をもらうことで、さらに精度は増していくしょう。
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小論文対策に不安がある人にとって、大きなサポートになるでしょう。